山道に毎日佇む男
2022/08/29
丁度5年程前の、某古都での話。
当時近所の山道を、仕事明けに散歩するのを日課にしてた。
途中からハイキングコースからズレて枝道に入るのと、時間帯のお陰で、全く他人とは出会わずにいたんだが、或る日から2回連続で、同じ奴と遭遇した。
そいつは黒っぽい服を着た中肉中背の男で、向かって右側の草叢を向き、じっと佇んでいた。
薄気味悪く思いはしたんだが、回れ右するのも躊躇われその時はおそるおそる後ろを通り抜けた。
次に出会ったのは4日後。
天候が不順だったのと、週末が入ったのとで、少し間が空いたんだが、この時も同じ場所で同じ様に佇んでいた。
この日は異様に月の綺麗な晩で、月明かりのお陰で結構手前で気付く事ができたんで、足音を殺しつつ引き返した。
そんな事があって、何となく散歩に出るのが億劫になってきて、暫く夜歩きには出なかったんだが、二週間程して、その山の中で他殺死体が見つかったとの新聞記事が。
まさかと思いつつも気になったので、日曜の昼間に出掛けてみたら、丁度男が佇んでいた場所の奥の藪が、モロに現場だった。
以上。何てことは無い話なのかもしれんが、俺はその後暫く睡眠薬の世話にならないと眠れなかった。