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イビキを録音して聞こえたもの

2023/12/14

父の友人に聞いた話
けっこう長文、編集(?)アリ

(1)
新しいアパートに引っ越してから、男(A)は体調が悪かった。
さして仕事が忙しいわけでもなく、睡眠も十分にとってはいるが、朝起きると常に薄らと倦怠感がつきまとう。
その旨を会社で話した時の周りの反応にAは驚いた。

「え~…、あんなに大イビキかいて寝るお前が?」
多少の違いはあれど、皆口を揃えてこう言った。

会社といっても小さな営業所だ。同僚や上司は10人に満たないが、それだけ気の置けない仲間ばかりなので異口同音に「大イビキかいて寝る」と言われたことに、Aは戸惑った。つまりA本人に、自分のイビキがひどい自覚がなかったのだ。

(2)
帰り道、Aは考えた。
自分のイビキは、どうやら社員旅行の時に発覚したらしいが、それなら早く教えてくれればいいのに…。

いや、待てよ。俺ってホントにイビキかいて寝てるのか?
長く独り身である自分を(要は寝ている姿を確認する者がいない自分を)、みんなで口裏合わせてかつごうとしてるんじゃないか?と思い至ったのだ。
そうなれば毎晩グッスリ「静かに」寝ている証拠を突き付けて、連中の鼻を空かしてやるのも一興だ。
その夜、Aは枕元に「録音」にセットしたラジカセを置いて、床に就いた。

(3)
翌日。休日である。
根拠のない期待感を抱きながらAは「再生」ボタンを押した。
5分、10分とAが寝付くまでガサガサと雑音が混じっていたが、その内「スースー…」という規則的な呼吸が聞こえ始めた。
Aが「やっぱり」と思いほくそ笑んだのも束の間、「スースー…」はやがて「ガーガー」になり、最後には聞くに耐えない大イビキになると、Aはガックリと肩を落とした。
同僚達が言っていた事は紛れもなく真実だったわけである。

(4)
さっきまでウキウキとラジカセにかじりついていた自分を思い出し、Aは古い木造の四畳半で一人赤面した。
明日出社したらみんなに詫びようと思ったAが、「停止」ボタンに伸ばしかけた指を止めたのは、突然「スースー…」と呼吸が戻った時だった。
「あれ?」とつい口に出したAがスピーカーに耳を近付けたその時

(5)
すぐそばのフスマが「スッ」と開く音が、スピーカーから確かに聞こえた。
狭いアパートなのでフスマの向こうはすぐ玄関になっている。
たが、確実に、「誰かがフスマを開けた」音がしたのだ。
Aは凍りついた。

「何かの聞き間違いだろう」と自問する間もなく、今度はフスマを「パタン」と閉める音。
そしてすぐに、「シュ…シュ…」と「誰かが」畳を歩く音が続いた。
どうやら「誰か」は、寝ているAの足元の方をぐるりと回り、反対側の枕元までゆっくり移動したらしい。
それから「ストン…」と座り込む音。

「……………………」

長い沈黙。
しかし、「誰か」は確実にそこに「いる」。
なぜか、それだけは、わかる。
それとも、感じるといった方が正確だろうか。

「停止」ボタンに指をかけたまま固まっていたAは、寝ている自分をジッと眺める「何か」を想像して、体中から汗が吹き出した。
そして次に、またフスマが「スッ」と開く音が聞こえた時、Aは飛び上がりそうになるほど驚いた。
「別の誰か」が部屋のフスマを開けたのだ。

そして同じように「シュ…シュ…」と歩いてAの枕元まで来ると、やはり「ストン…」と座り込んだ。
Aの頭は恐怖と混乱の極みである。
にも関わらず、その後部屋に入って来る「誰か」は次々と現われた。

(7)
まず「スッ」とフスマが開き、「パタン」と閉
「シュ…シュ…」と歩いて枕元まで来ると「ストン…」と座り込む。
しばらくの後、また「スッ」とフスマが開く音…。
「スッ」
「パタン」
「シュ…シュ…」
「ストン…」
これが繰り返された。

Aは気付く。
「入って来る『誰か』は、皆体格や年令、性別が違う」
どこで判別がついたのかはわからない。足音からそう判断したのか。
まるで、たくさんの人が小声で耳打ちしているような「ボソボソ…」という空気が部屋中に充満している。
かと思えば、子供が「キヤッ…キヤッ…」と戯れる声も断片的にあるような。
瞬間、Aは「葬式の風景」を連想して、ますます呼吸を荒くした。

いずれにしろ、「人数」はAを取り囲む程には達した。
得体の知れない騒めきは、まるで脈打つように強弱している。
その中でAは「一人」の囁きに引き付けられた。

「『こいつ』は誰とも会話していない」
「ずっと俺の耳元で何かを囁いている…!」
何と言っているかはわからない。いや、そもそも「人間の言葉」であるかも定かではない。

Aの恐怖は頂点に達した。
体はピクリとも動かせない。

(9)
バチン!
テープの片面が終わった音だった。
その音に弾かれるように我に返ったAは、狂ったようにテープを裏返すと、すぐにB面を再生してみたが、そこには自分の大きなイビキしか聞こえなかった。
Aは最近体調が悪かったことを思い出した。

「このアパートに引っ越してから、毎晩『こいつら』は来てたのか?」

Aはすぐに別のアパート探しにとりかかることにした。

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