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コオォーーンン

2022/08/30

俺が小五の時の事なんだけど。

生まれてからこの方ずっと東北で暮らしてきたんだ、俺。当然学校も地元でさ。小五の夏に行った林間学校も東北の有名な山に行って寝泊りしたんだよ。3泊4日で。

その山っていうのが多少曰く付きのとこで。宿泊施設で働いてるおっさんから聞いた話(半強制的に聞かされた)だと、夜になると施設の近くを流れる川の水の中に無数の虫の死体が混じるとか、戦国時代にこの山に逃げ込んだ落ち武者の霊が出るとかそういう話もあったんだ。

当時父親が死んでふさぎこんでた俺にとっちゃ下らない話だったわけよ。友達も本気にしてるのは当然ながら極少数(そういうの好きな女子)だった。
で、日中は山登りしたりレクリエーションしたりで、そんな話頭の片隅にも無かった。

ところが二日目の夜にさ、風も無い蒸し暑さで眠れなくて目ェ閉じながら寝返り打ちまくってたんだ。そしたら廊下の方から妙な音がしだしたんだ。唐突に。
その部屋付近の構図がこんな感じ。

  部屋1  部屋2  部屋3
──┘└──┘└──┘└──┐
☆廊下       非常口→│
──┐┌──┐┌──┐┌──┘
 部屋4  部屋5  部屋6
      ↑
   俺らが寝てた部屋

☆の方から一定感覚で「コオォーーンン・・・コオォーーンン・・・コオォーーン・・・」っていう風に硬いスーパーボールを床で跳ね返らせてるような音が。
それと同時に廊下の奥の方から硬い靴音が響いてきてな。
ゆったりしたペースで「コツ・・・コツ・・・コツ・・・」って。

そん時は時計を持ってきてなかったから「先生が見回りに来たかな?」と思ってたんだ。
で、蒸し暑いの我慢してじっとしてたんだ。そしたらそれぞれの部屋の前で停まってはドアを空けて入り、直ぐに出てきてたんだ。

ところが俺の寝てる部屋の前に来たら停まらずにドア開けたんだ。して、ベッドの中を一人一人覗きこんでるみたいなんだ。
俺は壁側向いてたから誰かは分からんかった。ちょっと荒めの「スウゥー、フウゥー」っていう鼻息は聞こえてたんだが。

3分くらい(多分)でそいつは出てったんだ。んで奥の部屋も見回りしてたみたい。六つ目のドアが閉まった音してからは靴音はしなくなった。その日はそんだけだったんだが子供心にかなり怖くてな。奇音は俺が眠りに落ちる少し前まで続いてた。

その次の日からは夜になんの異常も無かったんだけど寝泊りしてる山の風景のまんまのとこで合戦してるのを遠巻きに眺めてる夢見たんだ。怖かった。
で、最後の日の休憩時間に奇音の事思い出しつつ色々歩き回ってたんだが、部屋に戻った時に風が吹いて妙な音がしたんだ。 「コオォーーンン・・・」って。

ビックリして音の方を振り向いたら、スライドドアが風で押されて戻るときに「コオォーーンン・・・」って鳴ってたんだよ。安堵と共にまた恐怖が湧き上がってきた。最初にこの音を聞いたときは“風も無い”蒸し暑さだったんだ。

それと連動してか足音の方の異常にも気付いて。最後の部屋は“一番奥”なのに足音も立てずにどうやって戻ったんだろう?
硬い床だったから絶対に何らかの音はするはずなんだ。裸足でも靴下でも。
奥は非常口しか無かったし非常口のドアを開けた音もしなかった。気付いた後は鳥肌がしばらく治まんなかった。

以上。俺が体験した話。

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