鬼爪
2022/02/20
少し前にこんな事があった。
僕「あ、すいません。指輪の宝石観てたら傷つけちゃいました…」
上司「えー?ダイヤモンドだよ?困るよ~」
僕「ホントすいません、弁償しますから!」
俺は大昔の事を思い出した。
あれは小学校3年の頃だったかな?彼女と出会ったのは…
場所は二階窓の外の四角い出っ張りみたいな所?ようやく人一人が立てる位のアレ。
掃除の途中に窓の下を見てると、その真下に居たんだよ…少女がしゃがんでた。
「何やってるの?危ないよ!そんな所に居たら!」
と咄嗟に言った。すると少女が上を向く、僕と眼が合った。
何と言えばいいのかな、ワカメを飲み込めば喉からそれが透けて見えるんじゃ無いかって思える位に白く妖しい肌。
「あ、危ないよ!早く戻…」
そして当時の僕が言葉を飲む位の美人。
少女「…めは?」
透き通る様な声だった。「え?何?」僕は聞き返した。
少女「つめは?つめをちょうだい」
最初は全然その意味がわからなかった・・・
「つめ?爪?君、保健委員なの?爪なら昨日の夜にちゃんと切ったよ?ほら…綺麗でしょ?」
指を少女に差し出した。
ぺリッ
嫌な音が響く、一瞬何が起きたのか分からなかった。
指先が何だかしっとりとしている…。
「ありがとう…」確かに少女はそう言った。
少女は窓の外からこっちをじっと見ている。
手には不思議な模様の付いた小壺を持っていた。
僕は「え?いや、そんな!まあね、当たり前だもん!やっぱ清潔が一番だもんね!へへへ!」
と頬を赤らめながらキョドっていた。
「ん?」
何故か自分の指先が赤い事に気付いた…インクか絵の具だろうか?
何だろう?何でこんな所に付いたんだ?
「痛ッ…うわあああああああ!」
咄嗟に飛ぶ様に後ずさり廊下の床に尻餅をつく僕。
左手人差指の爪を剥がされていた…!
「なななな?なな何?何なの?え?え?な?」
僕は5分位そこに腰を抜かしたまま倒れていた。
子供の頭で必死に考えた末にいつも観ていた
学校の怪談というアニメを思い出した。
少女は無表情でずっとこちらを見ている。
あの血の付いた小壺を持って…。
「…!」
声も出さずに職員室の方へと走り出していた!
職員室に駆け込むと、先生達が介抱してくれた。
安心したのかパニックになったのか大声で喚き散らしたが担任のU先生と一緒に保健の先生の車で病院にそのまま直行した。
病院で手当してもらってる時にU先生は言った。
「爪はがしちゃったんだね…痛かったよね?もう大丈夫だからね?」
保健の先生には「今度からはちゃんと爪は切ろうね?」と言われた。
包帯を巻いてもらってその日は家に送って貰った。
そして数ヶ月後、指の包帯を取る。
「なんじゃこりゃ!?」それが第一声だった。
人差指には青い爪が生えていた。
怖くなって病院で調べてもらったが原因は不明だった。
サンプルを取りたいと医者に言われて爪切りで切ってもらう事になったが爪切りが壊れただけだった。まさかまた剥がす訳にもいかず「ちょっと様子を観てみましょう」という事になった。
そして現在。
僕はとある占い師の所でアルバイトをしている。
左手にいつもしている手袋をし忘れたまま仕事をしていて宝石を傷付けてしまって凄く怒られたのだ。思えばこの爪のおかげで今までの人生色々な目に遭った。
この鬼爪は一体何なんだろうね?知ってる人居る?