ネット上に存在する不思議で怖い話を
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廃墟の鏡

2020/07/06

誰にでも”影”はあると思います。もちろん生きていればですが。
もちろんあいつは”影”が薄い・・・とかの”影”ではなく常に自分と一緒について来る”影”です。
これから話す話しは、記憶がまだ新しい数年前の出来事です。
僕が中学2年の時でした。
僕が通っていた中学校は宮崎にあるH中学校で各学年3クラス程度の生徒数も少ない学校でした。
そのためか友達も沢山出来て学校終わりには友達と毎日遊んでいました。
特に親しい友達にA君とB君がいました。
A君とB君は小学校からの付き合いなので何をするにも一緒でそのせいか趣味や行動も似ていました。
当時、僕たちの間でエアガンが流行っていました。
学校ではエアガンを持つことを禁止されていましたが、エアガンのカタログを持ってきてはこれはカッコイイだとかこれが欲しいだとかもっぱらエアガンの話で盛り上がっていました。
ある日A君がエアガンを買ったといいA君の家にエアガンを見に行くことになりました。
それほど大きくないハンドガンでしたがすごくリアルで一気に心を奪われました。
次いで影響されたB君もエアガンを買い僕もエアガンを買いました。
それからはエアガンを持ち行って、毎日のように的当てだとかクモ打ちだとかして遊んでいました。
それから夏休みが近くなった頃、自然と怖い話を耳にする機会が増えてきました。
学校の先生の話す怖い話も怖かったのですが、クラスに霊感の強い奴が一人いてそいつもよく怖い話をしていました。
そいつの話す怖い話っていうのは、簡単に話すと・・・

学校の近くに潰れた施設(実際にあります)があって、友達と友達の兄貴の3人で夜中その施設に入って肝試しをすることになったらしい。
その施設は結構有名で心霊スポットになっている。
施設のトイレにある鏡の前で4秒間目を閉じて、目を開けた時、鏡に女性の顔が写れば良いことがあり逆に男性の顔が写った時は一生呪われるという噂があった。
それを試すために3人は行ったらしい。
まず一人がトイレに入り、後の二人はトイレの外で待つことになったが、最初に入った一人、その次に入った一人、二人とも自分の顔以外何も写らなかった。
ところが最後に友達の兄貴が入って二人が外で待っていると、急にトイレで「ギャッ」と悲鳴がして慌てて外の二人が駆け寄ると兄貴の右足から血が流れていたという。
たいした出血ではなかったものの3人は施設を逃げ出した。
結局なんで足から血が出たのか分からないという話だったと思う。

その話を聞いた僕達は興味本位でその施設に行くことになった。
ただ僕達は噂を試すのではなくお化け退治感覚で行くことになった。
実施日は土曜日の夜12時。
それぞれ、親が寝た頃に家を出ることになった。
持ってくる物は、エアガン、懐中電灯。
そして土曜日の夜12時。A君もB君も集合場所に集まっていた。
A君「エアガン持ってきた?」
それぞれエアガンを持ってくる約束だったので、忘れずにエアガンを持ってきた。
A君は、エアガンの他に塩を持ってきていた。
僕が何で塩を持ってきたのか聞くと
A君「呪われた時には、塩が効くっちゃが」
と自信満々に答えた。
僕もB君もふーんと知識のあるA君がいることに安心していた。
集合場所から施設までは近かったので歩いて行くことになった。
普段歩き慣れた道も懐中電灯の光だけでは別の道に見えた。
施設の入り口に着くとさすがに不気味さがさらに伝わってきた。
門は閉められていたものの簡単に乗り越えられる。
扉は壊れて開いていたので、そのまま入ることができた。
B君が「なんかやばくねぇ?」と少し怖気づいていたが、僕もA君も「大丈夫やがぁ」と言いながらもB君の背中を押しながら前に進んでいった。
施設は2階建てになっていてとりあえず僕達は1階を探検することになった。
懐中電灯の光以外は月明かりさえも照らされず視界はかなり狭かった。
僕もA君もB君の肩に掴まり身を寄せ合っていた。
たまにB君が「うわっ、何か踏んだっ!」と叫ぶと僕もA君も「ちょ、おま、マジ脅かすなって」と言いながら震えていた。
ある程度時間が経つと少し暗さにも慣れ、ふざけて「何か後ろにいねぇ?」とか「お前、背中に何かついちょるじ」とか言いながらお互いを脅かしては笑っていた。

1階をとりあえず探検した後は2階に行くことになった。
2階、例のトイレがある場所だった。
「お前先行けよ」と先の見えない階段を前に譲りあいながらも、3人横一列になって進むことになった。
「やべぇよ、ぜってぇ何か出るて」とB君が急に怖がり出す。
確かに1階とは明らかに雰囲気が違い、壁も床もボロボロだった。
A君が「なぁ、今何か音せんかった?」と急に呟いた。
「おい、マジそういうのやめろて」と僕もB君も怖さのあまり神経質になり、少しキレ気味で言った。
それでもA君は「いやマジだって」と反論する。
それからしばらく3人で口論になったが、次はB君が口を開いて、「ちょいまて、ちょいまて!」と何か焦って話を止めた。
僕もA君も何事だと思ってB君を見た。
B君が「俺も聞こえた」と言った。
A君が「やろ?聞こえたやろ?」と疑いが晴れたように目を丸くしていた。
B君「うん・・・何かカツカツって音じゃねぇ?」
A君「そうそう!何かたまぁにだけど聞こえるよな」
二人は意気投合したようだった。
僕には全く何の音も聞こえなかったのできっと二人がまたふざけてるんだと思っていた。
ところが二人ともなぜか焦りだしてほぼ同時に「こっち来てねぇ?」と口を合わせた。
どうやら足音が聞こえているらしい。
とりあえず身を隠すために僕達は近くに倒れていた大きい机の裏に隠れた。
「やべぇやべぇ」と言いながらA君が塩を周りに撒いて僕達にも塩をかけた。
さらに緊張が走ってそれぞれエアガンを握り締めた。
いざという時はそのエアガンで戦うつもりだった。
「聞こえる?」とB君が聞いてきた。
「いや・・・お前は?」とA君が返した。
相変わらず僕には全く聞こえなかったので、首を振った。
「どうする・・・行く?」とB君が言った。
何も言わなかったけど、僕もA君も頷いた。
正直怖かった。
机の影から身を出したとたん霊がいるんじゃないかといろんな妄想が頭に沸いてきた。
せーので身を出すことになりエアガンを構えていっきに飛び出した。
懐中電灯を照らす。
何もない。

3人とも息が上がってハァハァ言っていた。
その時A君が叫んだ「おい!あそこ、トイレのほう!」
3人が一斉にトイレのほうに懐中電灯を向けた。
一気に明るくなるトイレ。
一瞬だったが影のような黒いものが消えるのが見えた。
「いたよな?何か・・・」B君が口を開く。
もちろん僕にも見えていたので頷いた。
だがあまりにも影がはっきり見えたので逆に恐怖はなかった。
きっと僕達以外に肝試しに来たやつらがいるんだと3人とも思っていた。
「おい!行こうぜ」とB君がエアガンを構えて走った。
もうその時は霊的なモノを追う、というよりも侵入者を追いかけるような映画のヒーロー気取りだった。
トイレの入り口の前まで来るとSWATが突入するようにエアガンを構えて壁にもたれた。
B君が目で合図を送る。
僕もA君も何も言わずに頷き一斉にトイレに懐中電灯を向けた。
ところが何もいなかった。
「おい!誰かいるっちゃろ?出てこいて!」とB君が叫んだ。
何も反応が無かった。
トイレは男女共同で使えるような作りになっており、男性がおしっこする用の便器が2つ並び男女で使える和式の便器が1つあった。
隠れるとしたら、その扉付きの和式の便器がある場所だけ。
ところが、扉は開いており、中にはもちろん何もなかった。
「おい、見たやろ?」とA君が確認する。
もちろん見えた。
他に隠れそうな場所を探すが、あるわけない。
一気にまた恐怖が襲ってきた。

「これだよな?鏡って」
ふいにB君が鏡を照らしながら言った。
「4秒目閉じるやつだろ・・・」と、A君が周りを警戒しながら言った。
「誰かやろうぜ?」とB君が言い出した。
僕もA君も例の”影”が怖くて、それどころじゃなかった。
「お前がやれよ。ここで見とくから」とA君が言った。
「お前らぜってぇ、ここにいろよ」とB君が念を押した。
「いかねぇいかねぇ。何かあったら助けるよ」とA君がエアガンを構えていた。
顔はにやけていたと思う。
そしてB君が目を閉じて、口に出しながら数を数えだした。
「1・・・2・・・」
後ろで見ていた僕に、A君が肩を押してきた。
口には出さなかったが、明らかにB君を置いて逃げようぜというような顔だった。
僕は首を振っていたが、A君の押しに負け、トイレから抜け出した。
B君がいるトイレを後に一気に階段まで走る。
逃げる足音に気付いたB君が「おい!マジお前らやめろって!!待てって!」とかなり焦った声で追いかけてきた。

既に階段で待っていた僕達は向こうから走ってくるB君を懐中電灯で照らしながら待っていた。
その時「!?」僕とA君が何かに気付いて叫んだ。
「おい!逃げろ!早くしろ!早く!」
思い思いに叫び、B君が来ると同時に階段を下りて施設を抜け出した。
それから走って近くの公園まで走った。
3人でぜぇぜぇ言いながらベンチに座った。
「はぁ、はぁ・・・マジお前らありえんて」
B君が息を切らしながら言った。
「わりぃ、まじスマン・・・」とA君が素直に謝った。
「で・・・何かあったの?」
何も知らないB君があらためて聞いてきた。
落ち着いてきたころA君が話し始めた。

「お前がさ、トイレから走ってきたやろ?そんときさ、俺ら懐中電灯でお前照らしてたじゃん」
B君がうんと頷く。
さらにA君が続ける。
「そんときお前のでかい影映ってたんだけど・・・なぁ?」と、急にA君が僕に目を向けた。
僕は何も言わずに頷いた。
「お前の影の他にな、手がいっぱい写ってたんよ」
「はぁ!?」とB君が驚いていた。
「そのいっぱい写った手の影・・・何かお前を引っ張ろうとしてるように見えた」
「はぁ?ウソやろ!?だって誰もいなかったやろ、何かあったらマジお前ら恨むからな」とB君が睨んだ。

そしてその日は、A君から塩をそれぞれもらい、帰宅することになった。
もちろん一人で帰るだけでも怖かった。
部屋でも明かりを消すことができず、ずっと塩とエアガンを持って、ベッドの上に座っていた。
翌日、日曜日は何事もなかったように家で過ごした。
そして月曜日。いつもどおり学校へ行った。
僕はいつも遅刻ぎりぎりで行くので、教室に入ったときには先に来ている生徒でギャーギャー騒がしい。
その日はいつもと違い、一つのかたまりのようなグループができていた。
何事かとそのグループに入ると、「お、来た来た」とA君が僕を招いた。
「今さ、土曜日のこと話してたっちゃけど、お前も見たやろ?」
A君が、忘れようとしていたあの出来事を思い出させた。
どうやら”影の手”のことを話していたらしい。

僕も参加して話していたら、霊感の強い、例の奴が口を開いた。
「お前ら、4秒数えた?」
それにA君が答えた。
「いや、数えたのはBだよ・・・なぁ?」
僕を見てきた。うんと頷く。
「あの噂には続きがあるっちゃけどね・・・」
例の奴が続けた。
あの噂とは先に述べた、鏡の前で4秒間目を閉じて目を開いたとき鏡に女性が写れば良いことがあって、男性が写れば一生呪われるというやつだ。
どうやらその噂には続きがあったらしい。
例の奴がさらに続けた。
「4秒数えて目を開けて、女性ならいいんだけど・・・男性だったらやばい。だけど、もっとやばいのがある。それは、4秒数え終わるまえに目を開けたときだ」
僕とA君はぞっとした。
もしかしたらあの時、B君は数え終わる前に目を開けたかもしれない。
B君は珍しく学校にはまだ来ていなかったので、定かではなかったが、4秒数える前に目を開けたらどうなるかA君が聞いた。
それに答える。
「うん・・・。4秒数える前に目を開けたら、鏡の中に引っ張られる。あの鏡割れてたろ?だから、体もバラバラになって引き込まれるらしい」
その時、教室のドアがガラっと開き一斉に皆が見た。
そこには腕に包帯を巻いたB君がいた。
「どうした!?」と皆駆け寄る。
B君が言った。
「分からん・・・土曜の夜、家に帰ったら切れちょった。たいした傷じゃなかったけど、血が止まらんかったからさ、おおげさやけど一応ね」と苦笑いだった。
例の奴がはっとして、聞いてきた。
「お前らさ、塩かなんかもっちょらんかった?」
「俺が持ってたよ。Bにも振りかけてやった」
Aが答えた。例の奴が謎が解けたように、しゃべりだした。
「そういうことか・・・。俺がさ、前はなしたやん?友達と、友達の兄貴で行ったってやつ。あれ、後から聞いたっちゃけどね、何か友達の兄貴は途中で怖くなって4秒数える前に目を開けたらしい・・・。それでな、魔よけとして、塩をかぶってたって。だから足を切られただけで済んだのかもな・・・」

あれから数年。忘れようとしても忘れられない体験は、今も脳裏に焼きついて、今もこうやって鮮明にカキコできる。
以上、ひと夏の経験でした。みなさん、影には注意しましょう。

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