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さようなら、お父さん

2020/07/05

父が死んだのはある日の0時5分でした。
それから病院にていろいろあり、父の亡骸とともに帰宅した頃には2時を回っていました。
電話をかけた親戚関係もまだ家に来ていなかったので、私は父の亡骸と共に仏間にいました。
父が仏壇の前に横たわっており、私がその前に座っていて、私の後方に位置する居間では母、兄と葬儀屋さんが話し合っていました。

しばらくすると玄関で音が聞こえ、その後扉が開く音がしました。
親戚でも来たのかと思って私が玄関に行くと玄関の鍵は閉まっていました。
うちの玄関は開け閉めや鍵をかけたりするときに居間にいても聞こえるほど大きな音がするので聞き逃すはずはありませんでした。
不審に思って外に出てみると、うちの前の道が曲がって先が見えなくなるあたりに人影が見えました。
こちらに気づいたのかその人影は振り返って右手を振った後、先へと歩いていき曲がり角で見えなくなりました。
家に戻ると、兄が玄関まで出てきていました。
兄「どうかした?誰か親戚でも来た?」
私「ううん、なんでもなかった」
そのときはそれで終わったのですが、親戚連中がそろってまたいろんな話をした後に玄関脇にあるトイレに行ったとき、親戚のものでは無い靴が玄関に出ていました。
それは父が仕事に行くときに履いていた靴でした。
父は死ぬ前、半年ほどほぼ寝たきりの状態で革靴を履く事など無かったのでその靴が出ているはずが無かったのですが、下駄箱を開けるとその靴の入っているべき場所が開いていました。

私はその靴を下駄箱にしまいながら、やっぱりさっきの人影は父で、出てきた私に気付いてさよならを言ってくれたのだと、そう思いました。

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