銭湯の顔見知り
2019/10/04
妻と別居していた時期に、古い木造アパートに住んでいました。
離婚寸前でした。
風呂がないので、いつも銭湯へ行っていました。
私は帰宅が遅いため、閉まる間際が多く、その時間にいつも来ているおじいさんと顔見知りになりました。
妻に先立たれ、子供も離れて暮らしているとの事。
私も別居の事情を話したりしました。
銭湯帰りに近くの居酒屋で一緒に飲んで行く日もありました。
そのおじいさんが銭湯に来なくなりました。
名前は聞いたけど家の場所が大まかにしか分からず。
病気にでもなったのかと心配していました。
ある日、銭湯が閉まる間際に入りました。
客は私だけ。
湯船につかっていると、おじいさんの声で「ありがとう。仲直りしなさいよ」。
びっくりして銭湯を出て、おじいさんに聞いた家のあたりを探しましたが見つからない。
次の日、駅から帰る途中、葬儀屋の前を通りました。
あのおじいさんの名前で葬儀をしています。
びっくりして中に入ると、あのおじいさんの遺影がありました。
銭湯でお付き合いがあったので、と線香を上げさせていただきました。
離婚寸前だった妻が私に会いに来て、「夢で知らないおじいさんに、あなたと仲直りするように言われたから、せめてもう一度お話合いをしましょう」それが和解につながり、今現在は仲良く暮らしています。