青い朝顔
2019/07/20
去年の秋、姉貴が結婚した。
そんときの結婚式での話。
結婚式なんだけど、親族だけで写真撮るじゃん。
新郎新婦を真ん中にして。
俺ら親兄弟は1列目に一緒に座って、にこやかに写真撮影。
写真撮り終わったあとに姉貴が、
「後ろに立ってた叔父さんがベール引っ張るんだよ。うしろヘンになってない?」
とお袋に言っている。
お袋も「えー?」とか言いながらベールを見たけど、特に崩れたりはしてない。
ただ、ベールの裾になぜか青い朝顔がひとつくっついていた。
頃は11月。
式場には花が沢山あふれていたけど、もちろん朝顔なんてない。
うしろに立っていた叔父に後で母が聞いたみたいだけど、
ベールは引っ張ってないし、朝顔にも覚えがないと。
ここからは後日談で、お袋が涙ながらに語ったんだけど。
俺ら、今は俺と姉貴のふたり姉弟だけど、俺にはもう1人姉がいたのよ。
姉貴と双子だった。
俺が5歳のときに、事故で亡くなった。
事故に遭ったのは、小学生になってはじめての夏休みを迎えようとした終業式の日。
学校からの帰り道で事故に。
最後に持ち帰っていた朝顔の鉢が遺品になり、あれから毎年、
その種を絶やさずに親父とお袋が育てている。
死んだ姉貴が、精一杯のおめでとうを言いに来たんじゃないかと、家族全員で泣いたよ。
これに関する後日談をひとつ投下。
朝顔は、朝咲いて夕方にはもうしぼむ。
咲くのは1回切り。
同じ花が咲くことはない。
姉貴のベールについていたのはもちろん花のみで、
数時間でしおれてしまってもおかしくないんだけどさ。
姉貴たち夫婦は式が終わったその足で新婚旅行へ。
一週間後に帰国したんだけど、その帰国する日まで花が咲いてたんだよ。
お袋が水に挿してはいたんだが、普通は絶対ありえない。
無事帰国したのを確認したように、次の朝しぼんでた。
そういうのもあって俺ら家族は、
あの朝顔は天国からねーちゃんが持ってきたと信じている。