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水道が怖い

2019/07/16

中学3年の時、同じクラスになったNと言う女の子と仲良くなりました。
おっとりして優しくて、女の子らしい良い子でした。
普段は物腰柔らかく笑顔を絶やさないNでしたが、
何故か水道を前にすると怯えた表情になり、口数も少なくなるのです。
水道から出る水と水道その物が苦手であって、
飲み水やプールなどは大丈夫だったようです。
水道嫌いの理由を聞いても、何も教えてくれませんでした。
夏休み。私とNは、当時所属していた茶道部の練習をしに学校に来ていました。
練習と言っても、お手前をやったり、簡単なお茶会を開催するだけなのですが。
水道に恐怖心を抱いていたNに代わって、別の部員がお湯を沸かしていました。
その日も、私と後輩部員が一緒にお湯を沸かしました。
Nはいつもと変わらず穏やかな様子でした。
さて、お茶会も和やかなムードで終わり、片づけの時間になりました。
茶碗や水差しは、作法室の隣の家庭科室の流しで洗うことになっています。
みんなで手分けして洗い物を運び、洗う係と布巾で拭く係に分け、
おしゃべりをしながら片づけを進めていました。
Nと同級生のKは、作法室で別の道具を片づけています。
私達は洗い物が終わると、家庭科室を出ました。
すると廊下にKがいます。
どうかしたのかと尋ねると、
片付けをしてる最中いきなりNが何事か叫んで、
外に出て行ってしまったと言うのです。
これから今日の反省会があります。
みんなでNを探すことになりました。
私と何人かの友人は、職員室方面に行ってみました。
しかし、職員室にはほとんど人がいませんでした。
Nも当然いません。
ドアを閉めて廊下を戻ろうとすると、男の先生の怒鳴り声が聞こえました。
「やめなさい!!」
職員室は校舎の一番東端にあり、
その前の廊下には職員達が出入りする出入り口がありました。
声はその出入り口の向こう側、つまり外から聞こえます。
私達は何事かと、チラッと外を覗きました。
外には職員用の簡単な靴箱と、
近くに運動部の人が利用する大きな足洗い場と、沢山の水道があります。
その足洗い場から大量の水が溢れていたのです。
排水溝があるのですが、それでは間に合わない程の量の水が水道から流れ出ていました。
元々浅い洗い場だったので、普段から水はあまり出さないように注意されてました。
一番端っこの大きな水道の前に、Nと先生がいました。
「やめなさい!」
なんとNは、両手で水道のレバーを思いっきりひねっているのです。
怒鳴りながら先生はNを水道から離そうとしてます。
蛇口からは滝のような水が流れ、先生もNもずぶ濡れです。
見ると、他の蛇口からも最大量の水が勿体ないほど溢れています。
「出さないと!全部出せよ!!なくなるまで出さなきゃ!」
とにかく「出さなきゃ」と叫びながら、狂ったようにレバーを、
これ以上捻れないという所まで回しているのです。
普段のNからは想像も出来ないような声と表情でした。
何人かの先生が来て何とかNを取り押さえましたが、
なおもNは狂った様に、
「全部出すんだあぁぁぁぁぁぁ!!」
と男のような声で叫んでいます。
声が枯れるまで語尾を「あぁぁぁ」と伸ばしています。
なかなか落ち着かないNを保健室に無理矢理運び、十数分後家の人が迎えに来ました。
私達は不安げに、家の人の車に乗せられるNを見つめていました。
もはや声が掠れて何を言ってるか分からないけど、まだ何か呻ってます。
その日以来、Nは学校に来なくなりました。
噂では受験ノイローゼで、どこかの精神病院に入れられてしまったんだとか・・・。
Nのいないまま私達は受験を終え、卒業式を迎えました。
Nが転校した事になっていた事を、その時初めて知りました。
クラスの寄せ書きをNの家に届けたかったのですが、既に引っ越していたのです。
数年経った今でも、水道を見るとたまにNの事を思い出します。
蛇口から流れる水を見ても、Nが何を怖がっていたのか未だに理解出来ません。

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