助手席の婆ちゃん
2019/07/16
俺は中古車ばかり乗ってて、
初めて新車買ったのは7年前。
ボルボ買った。
納車になるまでワクワクして、
自分の婆ちゃんに
「車が来たら、カミさんより真っ先に一番に婆ちゃん乗せるからね」
と何故だか宣言した。
で、納車して、約束通り家の周りのトンネルとかグルグルドライブした。
婆ちゃんは
「乗り心地がフワフワしてていいねえ、高級だねえ」
なんて言ってすごく喜んでた。
それから数年、一昨年婆ちゃんが亡くなるまで色々面倒みてた。
何度も
「あれは嬉しかった」
と言ってた。
最後にSOSの電話がかかって駆けつけた時も、苦しそうに
「いい車だから早く来てくれて驚いた」
と言ってた。
そして亡くなった。
俺は嫌なことがあると一人で車に乗り、
助手席のもういない婆ちゃんに向かって叫ぶように話しかける。
するとたまに匂いだす、あの心地よい加齢臭と、
昔住んでいた家のカビ臭い香りが。
気のせいじゃなくて本当に匂う。
どうせなら声を聞かせて欲しい。
あ~書いてて泣けて来たわ