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ばーちゃんの遺品

2019/07/12

ばーちゃんが病院で死んで、
一人暮らしだったアパートに搬送されてくるというので、
近所に住んでた俺が待っていた。
俺は孫ね。
すると、叔父叔母が次々とやってきて、
互いに口もきかずにタンスやら押入れを物色している。
ばーちゃんを迎える準備してるのかなと思いながら、
無慈悲な俺はボケーっと待ってた。
やがてばーちゃんが到着して、
葬儀屋の人と俺が室内まで運んでるのにも関わらず、
叔父叔母は手伝わない。
結局俺が布団引いて、
担架からばーちゃん降ろして、
葬儀屋と一緒にドライアイス入れた。
通夜とか告別式とか葬儀の説明は
全部俺が聞くことになって、
葬式の総指揮(シャレになったw)を俺がとった。
叔父叔母の子供たち(俺のいとこ)も合流して、
家宅捜索のように室内を物色し続けてたね。
一部の強欲じゃない親戚達は唖然としてた。
そして物色組は、
「嫁いだ娘の家に遊びに行く予定がある」
「同窓会がある」
「友人と旅行に行く」
と言って、
通夜で出す寿司だけ食って帰っていった。
葬儀でねーでやんの。
実の娘とかもいるんだよ。
ばーちゃんの着物やアクセサリーを持ってかれた。
実は俺と俺のお袋は一族から勘当されてて、
墓に入ることも姓を名乗ることも許されてないんだけどさ、
俺がばーちゃんの葬式あげるような形になってよかったと思う。
いい経験になったよ。
(意外と金かかるのな。)
ばーちゃんの葬式が終わった後に残った仕事は、
アパートの引き払い。
捨てるもの、売るもの、
誰かが持っていくものを整理する。
買い取り業者が来て大物を運び出す前日、
俺はばーちゃんの匂いがするその部屋で酒飲んで寝た。
しかし夜中に首筋に激痛を感じ、飛び起きた。
電気をつけるとちっこい蛾がハタハタと飛んでいたが、
そいつに刺されたのかどうかはわからない。
・・・赤富士のように小さく腫れて、
先っちょがすげー痛かった。
問題はそんなことじゃなく、
激痛で飛び上がった際に、
業者へ売るはずだった茶箪笥の戸を蹴破ってしまった。
確か買い取り金額は500円くらいだったが、
粗大ゴミとして引き取ってもらうには
4000円払わなければならない。
つーことで、俺が茶箪笥を分解して
燃えるゴミで捨てるハメになってしまった。
かなづちとのこぎりと
バールのようなもので箪笥を壊す俺。
なんて説明していいかわからないけど、
内側というのかな、
箪笥の中に何か貼り付けてある。
貼ってあるのはガムテープだが、
何かを貼り付けているように見えた。
しかもたくさん。
そのガムテープを一枚はがしてみると、
金属の薄っぺらな板が一緒に貼り付いていた。
ガムテープの糊をとって良く見てみると
「・・・・金?」。
テレビとかでよく見る金の延べ棒の、
ものすごいうすっぺらい小さい奴でした。
チョコレートひとかけらくらいの大きさのものもあり、
全部の重さで約1.5キロでした。
全部ポケットに入れて、
ずり落ちるズボンをあげながら
こっそり家に持ち帰りました。
深夜、首の激痛がなければ箪笥を壊さなかったので、
業者に渡されてしまっていたんだよね。
ばーちゃんが教えてくれたと勝手に信じ、
形見として大事にしまってあります。

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