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ぶらさがる腕

2019/06/20

俺、結構オカルト系は昔から大好きだったんだけど、
小さい頃から全然、不思議な体験や幽霊らしきものを見たことはなかった。
だから大きくなるにつれて、
「やっぱ幽霊とかって存在しないんだなあ」
なんて懐疑的になっていた。
そんな俺がもう30過ぎてから体験した話。
ある秋の日、俺は昼過ぎから外回りの仕事があって、
現場を出て最終的に仕事場へ向かったのは、日が暮れかけた頃だった。
ちょうど車の後ろから秋の夕日が差していて、前方に長く影が伸びていた。
道は田舎の農道みたいな、車2台が通れるくらいの狭い道。
でも、この地域はこの道しかないんで、結構車の通りは多い。
途中で、脇道から俺の前に車が入った。
軽のワゴン車両で、確か濃い緑色だったと思う。
ちょっと通勤ラッシュにかかる時間帯なので、道は込んでいて、
俺は前の車にぴったりとくっつく形になった。
前の車を見ると、結構なおっちゃんらがぎゅうぎゅう詰めで乗っている。
俺は
「あんな小さい車にあんなに乗らなくても・・・」
なんて思っていた。
車の流れは案の定、ちょっと行くとノロノロ運転になり、渋滞となった。
俺はハンドルに両手を乗せて、覆いかぶさった形で前の車を何気なく見た。
すると!!車の底から、腕が生えてる!!
まさにニョキっという感じ!
俺は
「え?え?見間違い?」
と思い、身を乗り出して覗き込む。
車は渋滞してるんで、かなり近づいても事故の心配はない。
でも、どう見ても腕。
しかも、走り出すとぶらーんという感じで、
なんかこう、糸かなんかで吊り上げられているかのように、ぶらぶらとする。
車が止まると、『はあ、疲れた』みたいな感じで、道路にポトっと腕を置く。
俺は、何回も目を凝らして見た。
確かに腕。
走るとぶらぶら。
止まると、ポト。
しばらく行くと、緩やかな右カーブで横断歩道に差し掛かる。
「ここならちょうど後ろから夕日が差してるし、
白い横断歩道で光が反射して、車の下がよーく見えるんじゃねえか?」
と思って、更に凝視。
でも、腕・・・。
そんなこんなで約15分ほど、じっくり観察しました。
途中でその車は右折し、
俺はその腕を見送りながら直進して別れました。
仕事場に帰ってから、
「すげえもん見た!すげえもん見た!」
と言っても、誰も信用してくれない。
残念。
で、後日談。
その車、実はタコ部屋から出てきた車で、
(だからあんなに乗ってたのね・・・)
そのタコ部屋に住んで強制労働させられていた人の中で、
会社内のトラブルで殺された人がいたことが発覚。
生き埋めだったらしい・・・。
事件自体があったのは、腕を見た2~3年前。
俺が腕を見た翌週(?)くらいに事件は発覚。
同僚に
「俺この前腕見たって言ったじゃん!?
あれだよ!あの会社!すげえ人いっぱい乗ってたもん!」
って言ったら、同僚もようやっと納得。
亡くなった方が、ずーっと車に憑いていたんでしょうか。
なんにしても、あんな不思議なものを見たのは初めてでした。

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