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夢に現れた人影

2019/06/09

女住職から聞いた話。
子供の頃、夜中に目が覚めてトイレに向かう途中、
廊下の磨りガラス越しに、家族では無い誰かが居間の炬燵に入っていた。
こちらに背中を向けていたうえ薄暗い常夜灯の明かりだったので、
顔はハッキリ見えなかったけれど、
テレビの横に置いた達磨の目が、
両方とも入っているのには気が付いた。
その達磨は、上の姉がそろばん検定の願掛けをして、
片目しか入れていない筈のものだった。
それから数日後、上の姉のもとに、そろばん検定合格の報が届いた。
そして更に数年後、今度は下の姉がそろばん検定を受けた時も、
やはり夜中にその人影を見かけ、下の姉も無事合格したそうだ。
けれど、彼女自身の受験の時は、人影はサッパリ現れてはくれなかった。
次に彼女がその人影に再会したのは、大学卒業後。
死んだ父の跡を継いで住職に納まってからの事。
当時付き合っていた恋人との結婚を計画していると、
夢の中にその人影が現れ、何故だか延々説教をされた。
夢から覚めて、何故そんなに叱られるのかなんとなく心当たりは有ったが、
構わず結婚を強行した。
彼女の結婚相手と言うのが、虚言癖と借金癖の持ち主で、
気にくわないと部屋に閉じこもって、ネットゲームと過食を繰り返す。
加えて姉の一人が酒に溺れてしまい、
この二人の食費と酒代で一時期、寺の財政が破綻しかける程だった。
更に結婚相手は、性的に自分本位で度々暴力を振るうこともあり、
夫婦仲はとても円満とは言えない有様だった。
また、結婚相手は勤務が不規則だと言う理由で、
寺の外に離れを建てさせると、さっさと別居を始めてしまい、
それは8年後の今も続いているのだという。
結婚前の夢以降、彼女はあの人影を見かけたことは無いそうだ。

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