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下宿先のオヤジさん

2019/05/25

父の話を思い出したので書きます。
生まれてからずっと北海道民。
大学だけ、親元離れて憧れの京都へ。
昔なので(父は60代)下宿住まい。
そこの下宿先のオヤジさんのことが、
父は大好きだったんだと。
知らない土地でひとりの生活、
親以外で初めて身近に接する大人。
オヤジさんはお酒と話好きのくだけた感じの人で、
北の田舎から出てきた父にいろんな事を教えてくれたんだと。
いい事も悪い事もいっぱい。
そのお陰もあって楽しい大学生活で、
京都時代は大切な思い出になった。
恩人だね。
で、無事に卒業して北海道で就職したんだが、
だらしない所のあった父、
手紙のひとつも書こう書こうと思いながら、
日々の忙しさにかまけて何もせず放置してしまった。
何年も経つとさすがに気まずくなり、
悪いと思いながらそのまま音信不通に。
この話を聞いた時、父は50代半ば。
つまり、後悔しながら30年以上経ったんだって。
当時、会社を経営しててけっこう苦しかった筈。
京都には出張で何回か行ってた。
その度に思い出すけど、
今更どうしていいかもわからなかったと。
そんな一泊の京都出張のある日、
取引先の都合で午後の予定がぽっかり空いたんだって。
初めて、行ってみようか、と思えた。
しかし30年以上前のこと、
電話番号どころか正確な住所もわからず。
けど、とにかく行って、町の空気だけでも吸ってこようと。
着いてみればさすがは古都で、
町は思ったほど変わってなかったんだって。
懐かしい道を記憶を頼りに歩くと、下宿の建物、そこにあった。
表札の苗字も同じ…。
勇気を出してインターホンを押した。
女性が出た。
怪しまれる覚悟で、道々考えていた説明を一気に話した。
「突然の訪問で申し訳ありません。
実は、30年ほど前にこちらの□□さんのお宅で
下宿のお世話になっておりました、○山という者です。
もしも当時をお分かりの方がいらっしゃいましたら、
少しでいいのでお話をさせて頂きたいのですが…」
そしたらインターホン越しの女の人が、
「…○山さん!?」
って。
ドアが開いた。
下宿の奥さんご本人だった。
すっかり年取ってはいたけど、懐かしい顔。
「よく来たねえ」
って、感極まった様子。
父の事も当たり前に覚えていたって。
父は懐かしくて嬉しくて、
もっと早く来るべきだったと思いながら、
「あの、オヤジさんは…?」
と聞いた。
すると奥さんはにこっとして、ちょっと黙ってから、
「あの人ね。今朝方に、亡くなりました」
と。
長々と書いて申し訳ないけど、
話としてはこれだけなんだ。
オヤジさんも事故とかじゃなくて、かなり高齢だったし、
普通というか、静かな最期とのこと。
父は泣きながらオヤジさんに手を合わせ、
不義理を心から詫びて帰ってきたって。
ただの偶然といえばそうなんだ。
でも30年以上、たった一日、その日に当たるなんて。
そんな偶然ってあるのかなって。
「お世話になった人が気になったら、
いつでもいいからすぐに連絡を入れろ。
どんなに時間が経っても、ダメということはないんだ。
後悔しないように」
って言ってたよ。
終わりです。
長いの読んでくれた人ありがとう。

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