ネット上に存在する不思議で怖い話を
読みやすく編集・修正してまとめました

本文の文字サイズ

大クスノキ様

2019/05/10

同僚とはよく実家の田舎っぷりを自慢しあう。
まあ自虐のふりをした郷土自慢みたいなものだ。
あるとき私は、兄が神隠しにあったことを話した。
結論から言えば、捜索範囲が広大だった単なる迷子の話。
しかし同僚は、ふっと真顔になり、ぽつぽつと話始めた。
地元の集落で『お山』と呼ぶ山がある。
小さなお社があったり、
山頂近くには古い墓石のようなものが並んでいたりするけど、
いまはその云われはわからない。
山腹には、集落からも見えるような
目立つ大きなクスノキがあった。
根本には小さな祠もあって、
年寄りは『大クスノキ様』と呼んで
拝みに行ったりしていたらしい。
あるとき、未就学の年齢の同い年の子供が居なくなった。
集落じゅう総出で、
田んぼや畑を探してもどこにもいない。
夏の長い日も暮れて、
集会場に集まった大人たちが、
やれ明日は朝から山狩りかと話していると、
その子がひょっこり戻ってきた。
聞くと、大クスノキに木登りして遊んでいた。
気が付いたら日が落ちていて、
木から降りられないし暗くて怖くて泣いていた。
すると、知らない老人が木から降ろしてくれて、
お八つをくれ、ここまで送ってくれたという。
半ば呆けた年寄りは、
大クスノキ様のお陰だと合掌したが、
他のものは首を傾げた。
というのも、大クスノキは半年前の落雷で木が裂け、
危険だからということで切り倒され、
今は切り株だけになっていたからだ。
「にっぽん昔ばなしみたいだよね」
と同僚は続けた。
その子も今はやはり集落を出て、
そこで世帯を持って普通に暮らしているという。

にほんブログ村 2ちゃんねるブログ 2ちゃんねる(オカルト・怖い話)へ

よろしければ応援お願いシマス

人気の投稿

人気のカテゴリ

RSS