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女子工員

2019/05/20

うろ覚えなので変なとこあってもご愛嬌。
長女である妹が製糸工場へ勤める事になった。
この村の女は大抵女工になる。
こんな田舎村で農作業をするよりもよっぽど金になるからだ。
連れられていく妹を見送りながら横目で米俵を見る。
妹と引き換えに得た米…。
父も母も兄弟達も妹よりも米俵に気が行っているようだった。
かく言う自分もそうだった。
今日は米の飯が食えるぞとそればかり。
勿論別れは寂しいし、妹にばかり大変な思いをさせて…
と申し訳なく思う気持ちもあった。
が、その後ろめたさも米俵の前では薄れてしまう。
貧しかった。ひもじかった。かなしかった。
数ヶ月後、工場の近くの川で胆がえぐり取られている男の死体が発見された。
そのまた2,3ヶ月後女の死体が見つかった。
死体には胆がなかった。
労働条件が悪く労働環境の不衛生な製糸工場で、ある病が流行った。
当時恐れられていた結核だ。
その結核の民間療法として怪しげなものまで信じられていた。
…胆、人間の胆が結核に効く、食べると結核が治るというのだ。
どう考えても異常なのだが、藁をもすがる思いが常識感覚を麻痺させていたのかもしれない。
兄は胆を結核になった妹に差し入れとして、食べさせていたのだ。
結局というか当然の事だが、結核は治るはずもなく、妹は工場内の隔離小屋で病死。
兄は…逮捕され、妹が死んだと告げられて数日後に自殺した。

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