最終列車
2019/04/30
仕事中に体験した話です。
仕事は列車の運転士をしています。
その日は大雨の中、
最終列車の乗務をしていて駅に停車中でした。
やがて出発時刻となり、
信号が青に変わった瞬間信号が消灯してしまいました。
おいおいこのタイミングで球切れかよと思いながら、
無線で指令に連絡しました。
こういう場合、赤信号とみなすという決まりなので、
しばらくその駅で足止めになりました。
指令から指導通信式(赤信号で列車を出発させるやり方)で
列車を出す準備をすると言われましたが、
お客さんが2人とも家族に迎えに来てもらうと告げに来たので、
その方法は取らず復旧まで待つことになりました。
1時間後、信号は復旧し、
回送として終点を目指し運転を再開しました。
原因は信号ケーブルを動物に噛まれたからでした。
おそらく狸と思われます。
しばらく走り峠の急勾配を登りきったところで、
駅の灯りが見えてきたのと同時にホームに人影がみえました。
まさか、最終に乗ろうとしてた客だろうかと思いましたが、
この駅から最終に乗る人なんていまだ見たことがありません。
だんだんホームに近づくと、
その人影は線路に身を投げました。
言葉も出ず非常ブレーキを掛け、
ただひたすら止まるのを願いました。
ホームを少しハミ出たところで列車は停止しました。
完全に轢いてしまったと思いましたが、
衝撃が全くありませんでした。
台車回りを確認していると、
3匹の動物(たぶん狸)が線路と台車との隙間から出てきて
走り去って行きました。
その姿を目で追っていると、
ヘッドライトに照らされた進行方向の線路が
少々歪んでいるのが見えました。
ん?と思い近づいてみると、
バラストと枕木が流出していました。
大雨で山からの水に耐えきれなかったのだろうと思います。
もしあのまま走っていたら
確実に脱線していたことでしょう。
もしかしたら狸がなんとかして
列車を止めようとしてくれたんじゃないかと思っています。
ちなみに、人影はもわーとした感じで、
背格好は人間って感じです。