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アメリカ人の父と侍

2019/04/24

父親が幼い頃に体験した不思議な出来事です。
私の父親はアメリカ人です。
父親は成人してから日本に移住しました。
小さい頃から憧れていた国が日本だったそうです。
そんな父(当時9歳)のためか、家族で日本へ海外旅行となりました。
父はとっても張り切り、ガイドブックを読み耽り、ワクワクしながら日本に到着。
日光や鬼怒川、新宿や浅草など、関東を巡ったそうです。
日本=忍者や侍だった父親は、忍者や侍がいないことにショックで、
わざわざアメリカから持ってきた宝物のオモチャの刀を、
道端のごみ箱に捨てたらしいです。
しかし、捨てた直後から激しい後悔にかられ、
観光から帰ってきた旅館で夜中に泣いていたそうです。
皆が寝静まり静まりかえった部屋に、いつの間にか侍が立っていました。
オーマイガー状態の父親に侍はゆっくり近付いてきて、
そーっと捨てた刀を渡してきました。
父は侍に
「サンキューベリーマッチ」
と言い、英語で興奮気味に話しかけました。
しかし侍はニコッとしただけで黙っています。
次の瞬間、スウーッと侍は消えました。
父は何故か、このことは絶対内緒にしなきゃ!
と思い、皆には黙っていました。
それから一週間、観光中に何度も侍は突然現れました。
父以外には見えていないらしく、侍は父を見て優しく微笑んでいました。
道に迷ったりしたときは、右手をかざしてくれて、
その方向へ進むと目的地に着いたそうです。
父はコミュニケーションをとれない侍へ、
自分と侍の手を繋いだ絵をかきました。
アメリカに帰国する前日、侍は夜中に突然現れました。
父は下手くそな日本語で、
「いっしょ、シカゴ、いこう」
と言いました。
侍は悲しそうな顔で首を振りました。
父は英語で
「PLEASE!PLEASE!」
と言いながら、激しく泣いてしまいました。
侍は静かに涙を流し、
色とりどりの小さな星が入った小びんを手渡しました。
父も侍に絵をプレゼントしました。
父は侍に
「ぜったい、また会えるよね」
と聞きました。
侍は淋しそうにニッコリして、スウーッと消えていきました。
帰国し、それから二度と侍に会う事はありませんでした。
しばらく経って、大人になった父は確信したそうです。
あのとき侍がくれたコンペイトウは、
二度と会えない自分を思ってプレゼントしてくれたものなんだと。
日本を好きになってくれて本当にありがとう。
これからずっと一人ぼっちにさせてしまってゴメンね…という意味だったんだと。

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