ムラサキ
2019/04/10
厨房の夏休み。
家族でおばあちゃんちに泊まった時のはなし。
俺が目を覚ますと、もう皆は廊下を挟んだ居間で雑談をしている様子。
「俺も~」
って感じで起き上がろうとした瞬間、初体験の金縛り。
起き上がろうと右肩を上げて体をよじった体制のまま、
ゴロッと布団の上にうつぶせに固まってしまって・・・。
(この後、今日に至るまで、こんな金縛りの入り方は一度もなし。
普通は目が覚めた瞬間、そのままあお向けにかたまる。)
で、パニクりながらも必死にあお向けに体を反転させた瞬間、またパニック。
なんと部屋全体がムラサキ色。
丁度、濃い紫のグラサンをかけた時の様なかんじ。
寝る前につけた豆球までムラサキに光ってた。
で、部屋(やっぱり紫のまま)を必死でキョロキョロと目だけで見渡すんだけど、
おばけらしきモノは見当たらず、ちょっと冷静になった。
すると、それまで聞こえてた隣室の雑談がとつぜんフッととまった。
と思ったら、
「チーン!」
と仏壇の鐘の音が聞こえて、誰かがとりつかれた様に
お経をあげる声が・・・。
おばあちゃんだと思った俺は、
「おばあちゃん!おばあちゃーん!!」
と声の限りに呼ぶのだが、
何か発声した瞬間に何処かに声が吸い込まれていくような、
不思議な感覚。
気付いてもらえた気配は無く、お経が延々と続くばかり。
再び半パニックになっている俺は、
「とりあえずムラサキをどうにかしなきゃ」
と何故か照明の紐
(延長の紐?が付いてて、手を伸ばせば届く距離)
を引っ張ろうと懸命に体を起こそうとした。
少しずつだが体を動かせることに気付き、もう少しだ・・と思った瞬間。
お経のこえが突然聞いたこともない男の声に。
しかも、耳を塞ぎたくなるような大声量で。
全身に鳥肌が立つような感覚の直後、どうやら失神。
次に目を覚ますと、部屋は普段通り。
ハッと隣室の方をみると、
おばあちゃんが食卓に昼食を並べてるところで、
他の家族はテレビに夢中。
飛び起きた俺は、
「さっき部屋がムラサキだった!お経、大声で読んでたおじさん誰!?」
と、まくしたてるが、みんな
「なに寝ぼけちょーだ?」
と相手にしない。
頭に血が昇った俺が更に続けようとすると、
視界に入ったテレビ画像に違和感が。
改めてテレビを注視すると、
例の航空機事故の中継をやっていました。
なんとなく、
「金縛りの原因はこれか。」
とおもいました。