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思い出

2019/03/27

小さい頃、親父は俺が嫌いだった。
物心ついてから小学生の中学年くらいまでは、
良い思い出なんて一つもない。
俺に対して口を開けば嫌味や暴言ばかりで、
「お前みたいなカスが俺の子供であるはずがない」
が口癖。
友達を作る権利なんてないと言われ、
友達を作る事も遊ぶことも禁止。
食事中何か零したり一言でも口を開けば、
線香の火を押し付けられベルトで叩かれる。
親父の笑顔なんて一度も見たこと無かったし、
連休や休日家族で出かけたり一緒に写真を撮ったこともないし、
学校の行事にも一度だって来てくれた事はなかった。
俺もそんな親父が怖くて、
夜や休日は、風呂と食事以外ずっと部屋に閉じこもっていた。
小5~6年の頃の記憶がない。
全くない訳ではないが、家族に関する記憶が一切思い出せない。
中学に入ってからは、
親父に怯えた記憶はない所か親父との仲は良好。
連休の度遠出し、休日は家族全員で買い物やドライブに出掛けた。
昨日用事があって実家に帰ったんだが、
突然昔のことを思い出して、親父に嫌味の一つでもと思ったんだ。
昔話の一貫のつもりで話したさ。
そしたら、親父もカーチャンも目真ん丸にしてキョトーン。
はぐらかすなよwと茶化してもキョトーン。
カーチャンに至っては、
「あんなに大事にしてくれた父ちゃんに、なんてこというの!!」
とぶちギレる始末。
カーチャンが俺に投げ付けてきた二冊のアルバムには、
俺が生まれたばかりの頃から、高校を出るまでの写真がいくつも貼ってあり、
写真の大半は、親父やカーチャンと写った写真だった。
赤ん坊の俺や園児服の俺を、愛おしそうに微笑みながら抱く親父。
運動会で俺と二人三脚してる親父。
ブカブカの学ランを着た卒業証書を持った俺を肩車する親父。
どれも見覚えがないものだった。
これは何なんだろう。
ただの記憶違いなんだろうか。
もし記憶違いだとしたら、
親父や家族との楽しい思い出が一切頭から消えて、
辛い思い出に書き換えてしまった自分が憎い。

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