ネット上に存在する不思議で怖い話を
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猿ジイ

2019/01/02

変質者と言っても、年中寝巻きみたいな格好で、
登校中の小学生の後ろをブツブツ言いながら、
5メートルくらい離れてフラフラついていくという程度で、
気味は悪いが実害はなかった。(少なくとも私に対しては)
赤ら顔で禿げていて、いつも前屈みだったから、
猿ジイというあだ名で呼ばれていた。
その猿ジイが、ある日を境に姿を見せなくなった。
クラスメートたちは口々に、
「逮捕された」
「精神病院に行った」
「死んだ」
などと噂していた。
私も猿ジイは気持ち悪いと思ってたけど、
持ち前の怖いもの見たさや、普通と違う者への差別意識などから、
猿ジイが消えたことを少し残念に思った。
猿ジイを見なくなってから1週間ほどたった日。
当時一緒に遊んでいた友人3人に、
「猿ジイの家に行ってみようぜ」
と誘われた。
私は二つ返事で了解した。
猿ジイの家は、学校から100メートルも離れていない場所にあった。
平屋の仮設住宅みたいなボロくて小さな家で、
家を囲うブロックの塀と家との間に、
バスタブや鉄パイプのようなガラクタが山済みになっていた。
入り口の引き戸には鍵がかかっておらず、簡単に中に入ることが出来た。
今思えば、中に猿ジイがいるかも知れないのに、
当時私たちは皆、
「猿ジイはもうこの家にはいない」
と思い込んでいた。
皆靴を履いたまま中に乗り込んだ。
家の中は狭く、1DKの安アパートのような感じ。
殺風景で、ガラクタで溢れる外とは打って変わってほとんど何もなかった。
居間には布団をかけていないコタツ、古いラジカセ、
灯油のポリタンクなどが無造作に置いてあり、
隣のキッチンには小さな冷蔵庫がおいてあるだけ。
家電製品は全部コンセントが抜けていたと思う。
何かを期待していたわけではないけど、
あまりに何もないので私たちはガッカリした。
「テレビも買えねーのかよ、猿ジイw」
とか、
「死体でもあればよかったのになw」
とか口々に言いながら、家の中を物色した。
すると、キッチンを見に行っていた友人が、突然
「うぉっ!」
と叫んだ。
どうしたどうしたと、皆がキッチンに集合。
叫んだ友人が指差す方向を見ると、冷蔵庫のドアが開いていた。
屈んで中を見ると、冷蔵庫の中には、
黒いランドセルがスッポリと嵌るように入っていた。
私は少しビビリながら、ランドセルを冷蔵庫から引っ張り出した。
ランドセルは意外にもズシリと重かった。
そして背(フタ)の部分には、
刃物で切られたように大きな×印がついていた。
「開けようか…」
「…開けるべ」
私はランドセルを開け、中身を床にぶちまけた。
ノートや教科書、筆箱が散乱した。
ノートには、『1ねん1くみ○○××』と名前が書いてあった。
教科書もノートも見たことのないデザインで、
自分たちの使っていた学校指定のものじゃなかった。
私は気味が悪くなった。
多分皆同じ気分だったと思う。
黙りこくって、床に散らばったランドセルとその中身を見つめていた。
私はその空気に耐えられなくなり、
「猿ジイの子供のころのやつかなぁ?」
なんておどけながら、
一冊のノートを拾いあげて、パラパラとめくってみた。
丁度真ん中くらいのページに封筒が挟まっていた。
封筒は口が糊付けされていたけど、
構わず破いて中に入ってるものを取り出した。
中身を見た途端に全身に鳥肌が立った。
封筒の中に入っていたのは一枚の写真だった。
男の子の顔がアップになった写真。
男の子は両目をつぶって口を半開きにしていて、
眠っているようだったけど、
まぶたが膨れ上がってる上に、
鼻や口の周りに血のようなものがビッシリこびりついてた。
「やばいよコレ・・・」
誰かがそう言った瞬間、突然ガタン!という音が風呂場の方から聞こえた。
皆ダッシュで猿ジイの家を飛び出した。
勿論件の写真を放り出して私も逃げ出した。
そして、そのままその日は流れ解散。
申し合わせたように、猿ジイの家に行ったこと、
あそこで見たものは皆二度と話さなかった。
私たちが猿ジイの家に忍び込んだ数日後、あの家は取り壊された。
あれからもう12年たつ。
正直、あんなに怖い思いをしたのは、後にも先にもあの一回だけ。
オカルトとも無縁の生活をしてきた。
なのに最近まで、
すっかり猿ジイのことも猿ジイの家で見たものも忘れていた。
多分、無意識の内に忘れようとしていたんだと思う。
それをどうして今になって思い出したのかと言うと。
一昨日、引越しのために実家で荷物をまとめていたんだ。
そしたら、しばらく使っていなかった勉強机の奥から出てきたんだよ。
あの男の子の写真が。

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