働けおじさん
2018/12/31
俺が子供の頃の話だが、近所に「働けおじさん」というのが出た。
町なかの工事現場で鳶や土工たちが仕事の合間に一服していると、
どこからともなく現れて、ムチのようなビニール紐
(ビニール製のナワトビみたいなものだった)で地べたをビシバシたたき、
「働けえ――! 働けえ――!」
と、わめくのである。
昔どこかの鉱石を掘る飯場で、こき使われたトラウマでおかしくなったのだとか言われていた。
ある時期から、おじさんは姿を見せなくなり、
実はビニール紐で首を絞めて殺されたのだとか噂されたが、
その後、おじさんの幽霊というのが現れるようになった。
夜中の誰もいない工事現場などで、ビシ・・・ビシ・・・とムチで地面をたたく音がして、
どこからともなく「働けえ~~! 働けえ~~!」
という声が聞こえてくるというのである。
その声を聞いた者は、みな労働意欲を失ったという。