白い手
2018/11/24
小学生の頃の話。
学校から帰宅してテレビ観てたら、祖母から電話がかかってきた。
内容は、隣家に住んでる祖母の叔母(おんば)がいなくなったから、
捜すの手伝えとのこと。
(親戚一同呼ばれた)
それから両親が急いで捜しに行った。
残念ながら自分は留守番。
おんばは鶏飼ってて、卵売り歩いたり、
山菜採りに山に入ったりする人だった。
ただちょっとボケてたから、どっかで迷ってんのかなと思ってた。
夜8時頃、心配になって母に電話。
『まだ見つからない。9時になったら警察に連絡入れようと思う』
秋口だったから凍死の心配はないが、
もし事件に巻き込まれてたら…と嫌な考えが浮かんだ。
9:30に母から
『おんばが見つかった』
と電話が入った。
ホッとして両親の帰宅を待った。
しばらくして両親が帰宅。
「おんば大丈夫なの?」
「警察呼んだの?」
「どこにいたの?」
と質問責め。
父は仕事終わってすぐ捜索に駆り出されたため、
かなり疲れていたらしくスルーされたが、母が答えてくれた。
・怪我はないが、一応病院に運んだ。
・警察呼ぼうとした時に、山の斜面に倒れているのを父が発見。
倒れていたが、呼びかけたら起きたらしい。
おんばを一度家に運び、何があったのか聞いた。
「山菜採りしてたら、足が滑ってバランス崩して落ちた」
一同、事件じゃなくて良かったと胸をなで下ろし、それぞれ帰宅。
母も帰宅しようと支度してると、おんばに手招きされた。
具合でも悪くなったのかと思って近づいたら、小声で
「本当は死んじゃうはずだった」
と、とんでもない事を言われた。
バランス崩して落ちたのは本当だけど、本来なら助からない場所。
「ああ、もうダメだ。死んじゃうと思ったらね、
上から長い白い手に腕を掴まれて、助けられたんだよ」
母は幽霊なんか信じてないが、気味悪いと言って話し終わった。
これだけなら良い話だと思う。助けてくれるなんて優しい幽霊もいたもんだ、と。
今日、97歳でおんばが亡くなった。
死因は老衰。
線香上げて帰ってきて、母に
「あの時は助かって良かったね。白い手だっけ?守護霊かなんかだったのかな……」
と、何気なく言ってみた。
「は?あんた何言ってんの?
おんばは白い手に、下まで引きずり込まれそうになったんだよ?
それに、白い手が助けたなんて一言も言ってない」
お互いに食い違い、気まずい雰囲気になったので、すぐ話題を変えた。
どっちの話が本当なのか、
実際体験した本人が亡くなってしまったので、確かめようがない。
因みに、母はボケや精神疾患はない。
もし、助けたんじゃなかったら、と思うとゾッとする。