タンスとタンスの隙間
2018/12/27
私が3才くらいの時の話。
和室に1人でいる時に、
何を思ったのか下敷を上に投げてはキャッチする、
みたいなことを繰り返して遊んでいたら、
うっかりタンスとタンスの隙間に入り込んでしまった。
取ろうと思ってとりあえず隙間を覗いてみたら、
格子のような影が見えて、
その向こうに影絵のように宴会かなにかをしている様子が見えた。
影絵のようにって言うのは、
全体的にオレンジ色の光に包まれていて影しか見えない感じ。
その様子を眺めている時は基本、
その宴会のどんちゃんした感じの音しか聴こえなかった。
例えば、外でどれだけ虫が鳴いていても
宴会の音しか聴こえなくなる、みたいな。
でもその後、母がご飯に呼んでくれる声は聴こえたから、
私を呼ぶ声は聴こえたのかなと思う。
タンスとタンスの隙間を眺めている時の、
まるで別世界にいるような感覚は今でもはっきりと覚えている。
小さいながらもその感覚が不思議だったのと、
宴会の様子が本当に楽しそうだったので、
暇があれば私はその隙間を眺めていた。
その隙間を発見して一ヶ月後くらいだったと思う。
父の仕事の都合で引っ越すことになった。
引っ越した先では、
タンスとタンスの隙間をみても何も見えなくてがっかりした。
それから私も大きくなって、
アレは小さいときにみた夢だったのかな、と考えるようになった。
けれど最近姉にその話をしたら、
姉は同じ場所でこちらに向かって手を振る女の人を見たという。
でも引っ越しのときに見たけど
あそこ普通に壁しかなかったんだよね、とも言われた。
私と姉で見たものは違うけど場所は同じっていうのが不思議だ。