テントの外の足跡
2018/09/02
茨城にキャンプに行ったときの話。
メンバーは友人A,B,Cと俺の男4人。
A,B,Cは連休さえあればキャンプに行ってるが、俺はいつも休みが合わず、この時が初参加だった。
「どうせ茨城なら海辺がイイ。」
「周りに迷惑がかかると悪いから人の少ないところがイイ。」
と、国道51号線から数百メートル細い道を入った所にある某海岸に辿り着いた。
その海岸入り口付近には先客の家族連れキャンパーがいたので俺達は更に海岸を進み、200メートル程離れた砂浜にテントを張った。
昼間はサーファーがイッパイいたが、夕食の準備をする頃には誰もいなくなり、見渡す限りその海岸には先の家族連れキャンパーと俺達の2組のみになってしまった。
周囲に灯りもなく早めに寝る事にしたのだが、テントは3人用だったので並んで寝るのは3人が限界。
そこでA,B,Cは川の字に、俺はその足側に一の字に、つまり「山」みたいな形で寝た。
夜中、俺は尿意を催し目を覚ました。
携帯で時間を確認すると2時ちょっと過ぎだった。
「こうゆう話は大概2時だ」
と全く信じてなかった俺だが、体を起こそうとした時、波の音と明らかに違う音が耳に入り、俺は体を硬直させた。
多分5メートルぐらいは離れているであろうその音は
「ザッザッザッ」
と俺達のテントに近づいてくる。
その音の重み、間隔から人の足音だと直感した。
ちょっと待て。
少なくともテント越しに灯りは見えない。
灯りも無しにこんな砂浜を歩くのは不可能だ。
家族連れキャンパーは南に200メートル程で、こんな所まで来るはずがない。
しかも足音は東側から聞える。
・・・第一、これは(生きてる)人間か?
俺の頭はパニック状態。
足音は既にテントの外数十センチまで近づき、俺達のテントの周りを時計回りに回り始めた。
「どう考えてもヤバイ!」
友達に声をかけようと思ったが大声を出すのも怖い。
しかも友達は俺に足を向けて寝ているので、頭部までの180センチ程度が異様に遠く感じる。
この状況で寝袋から出る勇気もない俺は尿意も忘れ、寝袋にすっぽり頭を入れ、足音が聞こえなくなるまで我慢する事にした。
しかもその足音、テントを一周する毎に俺の所で停まり、1~2回テントの布を押していく。
テントの骨組が歪み「ギシィィ」と嫌な音が響く。
俺は必死に脳内で歌を歌いながら
「寝るんだ!寝るんだ!」
と繰り返し、ふと気が付いた時には外も明るくなっていた。
俺は尿意を我慢していた事を思い出してテントの外に飛び出し、なんとか粗相をせずに済んだ。
ホッとしてテントに目を向けて愕然とした。
テントの周りには何週したか解らないほどの足跡があり、それは海の方から来て、また海の方に戻っていた。
俺は友達3人を叩き起こし、事情を説明して逃げるようにその海岸を後にして、その日は他のキャンパーが沢山いる公共のキャンプ地に泊まった。