霊を利用する
2018/08/12
オレの友達のKの話。
自称見える人。
オレ自身は幽霊の存在は否定も肯定も出来ない立場。
幽霊なんか見た事ないけど、そんな事言ったらオレがまだ実物を見た事ない物なんてこの世にいっぱいあるし。
だから友達の話す霊体験・目撃談についてはウソだともホントだとも思わなかったけど、妙に初対面の人の過去やら未来の出来事を言い当てたりする奴だった事は確か。
それが霊感なのか別の能力なのか、はたまた偶然なのかオレには分からん。
そんなKが一人暮らしを始めた。
5階建てのワンルームマンションの一室。
武士の霊が出るらしい。
夜中にガシャガシャ鎧の音がして目を覚ますと、鬼の形相の武士が玄関の扉のやや上方(なぜかそこには在るはずのないお札が貼ってある)を弓で射る。
朝になって確かめると、弓矢は勿論お札もない。
そんな事が毎晩続いて、流石にウザくなってきたらしい。
元来Kは怖がりなので、今までは霊に遭遇しても極力無視の方向で済ませてきたのだが自分の住む場所に出るという状況になったら話しは違う。
腹を括って武士と対話する決意をした。
ペプシコーラとたけのこの里を二人分用意して、武士が出現するのを待ち構えた。
「普通そういうのって日本酒とかお団子とかの方が良いんじゃないの?」
って聞いてみたら本人曰く、
「昔の人が食べた事ない物のほうが物珍しくて喜ぶかもしれないし…」
という根拠との事。
まあそれで交渉というかKの希望を伝えたらしい。
怖いから弓を射るのはKが不在の時だけにして欲しい事、やって欲しい事があれば出来る範囲で協力する事等を訴えた。
武士は特に分かったとも嫌だとも言わなかったらしいけど、翌晩からは出てこなくなった。
今まで避けていた霊とコミュニケーションが取れた事に嬉しくなったK。
ちょくちょく「食べていいよ」の置手紙と共にお供え物(ピザやらポテチ等)をするようになった。
ネットの使い方も教えたらしい。
教えたと言うか中空に向かってやり方を説明しながらエロサイト巡りしたりGoogleで適当に検索してみたり、というだけの事らしいけど。
お供え物とネットに関してはオレも体験した。
お供え物を置いてKと一緒に外出。
何時間か後に帰宅すると、ポテチが減ってる。
外出前に確認したブラウザの履歴(エロ系ではなく何故か動物関連のサイト)が増えてる。(これに関しては協力者がいれば再現出来る事だけど、真実は不明)
最近はKも図々しくなって、お供え物の置手紙にお願いを書くようになった。
「液晶テレビが欲しい」
と書いて懸賞応募。
アクオス当てやがった。
「○○ちゃんと仲良くなりたい」
と書けば、○○ちゃんは彼氏と別れてKといい感じに。(テレビも○○ちゃんも偶然かもしれんけど、これでオレもちょっと信じかけてる)
夏になったらサマージャンボお願いする気らしい。
武士からメッセージとかお告げみたいなものはないらしいので、競馬やロトなんかは断念。
もし宝くじ当てやがったらオレも霊の存在を完全に信じてしまうと思う。
けど、いつかKにはバチがあたるような気がする。