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薄情な家族

2019/03/06

高校の頃の友人には霊が見える父親がいた。
その父親(仮にR氏とする)は
ユネスコホテルの職員をしていた。
年中、全国にあるホテルを飛び回っているらしい。
R氏は毎年夏になると
○○県にあるホテルを訪れることになっていた。
そのホテルは4階建ての本館と別館があり、
その間は渡り廊下でつながっていた。
7年程前にそのホテルに訪れた時、
渡り廊下の4階から下にいるR氏を女の子が見ていた。
小学校低学年ぐらいで、
どこにでもいそうな普通の女の子。
普通と違う所は、
彼女は既に死んでいるという事。
R氏にはそれがすぐに解った。
「可哀そうにな・・・成仏するんだよ・・・」
心の中で手を合わせ、
ホテルの職員事務所に歩いていった。
仕事を片付け、常駐の職員と雑談をしていた。
先程の女の子の事を話そうとしたが、
見えない人にわざわざ伝えることも無いかと思い直し、
そのままホテルを後にする事に。
帰りがけにもう一度渡り廊下を見てみると、
まだ4階からこちらを見下ろしていた。
次の年も去年と同じように
4階の渡り廊下から女の子はR氏を見ていた。
その次の年も、そのまた次の年も・・・。
女の子を毎年見かけるようになって5年ほど経った夏、
今年も同じ所にいるのだろうと、
R氏は渡り廊下を見上げた。
女の子は今年もいた。
3階の渡り廊下からR氏を見下ろしている・・・3階!?
R氏は不思議には思ったが、
そんなこともあるのだろうと勝手に納得し、
例年どおり仕事をこなしてホテルから移動した。
「で、次の年そのホテルに行ったら、
2階からおとうさんを見てるんだ。
それが去年の話。今年は目の前にいるのかな?」
と、この話を娘(オレの友人)に聞かせて、
R氏はそのホテルに出かけていった。
娘は父親がこのまま帰ってこないような気がしてならなかった。
「ただいま」
父親が帰ってきた。
とりあえず無事のようだ。
娘はホッと胸を撫で下ろす。
「おかえりー。どーだった?」
小走りで玄関まで父親を迎えに出た。
しかし父親の様子がおかしい。
どことなくバツが悪そうに娘に話しかける。
「・・・・・・・ついてきた・・・」
父親は声を震わせながら、
自分の脇の空中を指差しそう言った。
その日の内に母親と娘はR氏を一人置いて家を出た。
その後まもなく離婚。
R氏は今でも一人でその家に住んでいる…いや二人でか。

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