ネット上に存在する不思議で怖い話を
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2018/06/06

俺がまだ学生時代の話です。
友達のAは、凄く怖がりなヤツでした。
夜に仲間で集まって遊ぶときなどは、よく怖い話などをしてAをからかって遊んでたものです。
で、ある日、学校も休みで暇だったので、Aの家にでも遊びにいこうかと思い、昼過ぎくらいにAの家に遊びにいったのです。
2人ともレゲーが好きで、ファミコンやスーパーファミコンなどに熱中して
「これ懐かしいなぁ~」
とか言いつつ盛り上がってました。
んで、ふと気がつくともう午後7時過ぎてたんですよ。
とりあえず飯でも食うかぁ~って事になって、弁当屋に飯を買いにいき、またAの家に戻ってきて、TV見ながら晩飯食ってました。
丁度その時、TVで心霊特集みたいなのやってたんですよ。
怖がりのAは、
「チャンネル変えようやぁ~」
とか言ってたのですが、Aの怖がってる反応が面白く、また俺もオカルト番組好きだったので、無理矢理チャンネルそのままで見てました。
番組も終わりかけてた頃、ふと俺は、あるイタズラを思いつきました。
ベタなイタズラですが
「あっ!!お前の後ろに霊が見えるぞ!!」
ってな感じで怖がらせようと思ったのです。
今思い返せば、その他愛のないイタズラが恐怖の始まりだったのです。
俺は、頃合いを見計らって、Aの左肩の上の一点を凝視し始めたのです。
もちろん、いかにも
「そこになにかいる!!」
とAに思わせる為の芝居です。
やがて、Aはそれに気付きました。
不思議そうな顔をして
「何?何見てんの?」
と聞いてきましたが、俺はそれに答えずに無言で、ただAの左肩の一点を見つめます。
小刻みに震えてみたり、驚愕の表情を浮かべたりしながら。
我ながら、かなりの演技力だったと思います。
それを見て、Aもかなり不安になったらしく、後ろを振り向こうとしました。
その時、
「振り向くな!!」
俺は叫びました。
Aはかなりビビッて俺の顔を見ています。
もちろん、俺は心の中では
「しめしめ」
と思ってましたけど。
「いいか、何があっても絶対振り向くなよ。お前の左肩の上に、白目むいて大口を開けて、狂ったように笑ってる女がいるんだよ」
と、俺が言ったあと、Aは暫く固まってました。
しかし、いくら怖がりといっても、それを鵜呑みに信じるはずもなく、
「・・・お前なぁ、また俺を怖がらせようとしてんだろ・・・」
と、疑いの目を向けてきたのです。
俺はヤバいと思い、
「馬鹿野郎!マジなんだよマジ!とにかくここから出るぞ!!」
と焦って芝居を続けましたが、Aは完全に俺を疑っています。
その時です。
「はははははははははははははははははははははは!!!!!!」
と絶妙のタイミングで、女の狂ったような笑い声が聞こえたのです。
俺も想像してなかった出来事にビビリましたが、何の事はない、つけっぱなしにしてたTVの、例の心霊特集の再現VTRの声だったのです。
しかし、Aは気が動転してるのか、俺の顔を見ながら震えています。
「これはイケる!!」
と思った俺は、
「逃げるぞ!!」
と叫び、玄関に走りました。
Aも必死の表情でそれに続きます。
Aの家を飛び出して、100mくらい走ったでしょうか。
俺は突然止まり
「あはははははははは!!」
と笑い出しました。
もうタネあかしをしようかなと思って。(しかし、思い返してみると、俺も相当イヤなヤツですね・・・)
Aは、きょとんとした表情です。
「ゴメン、全部ウソ!!さっきの女の声もTVの声!!」
そう言うと、流石にAも理解したらしく、怒りの表情で俺を睨んできます。
そして、Aの俺に対する小言が30分くらい続きました。
そりゃ、怒って当然だと思います。
結局、Aを完全になだめるのに1時間くらいかかりました。
「Aに昼飯を1週間おごる」
という条件で・・・
んで、それから3日くらいたった(もちろん昼飯は毎日おごりました)
学校での昼休みの時、Aが真剣な表情で俺に聞いてきたのです。
「なぁ、この前の件、ホントに冗談だったんだよな?」
俺は、こいつホントに怖がりなんだなぁと呆れつつも、
「当たり前じゃん。全部俺の芝居だって。アレか?まさか本物の幽霊でも見たのか?」
と、からかいつつ聞くとAは、
「ヤッパそうだよな。・・・イヤ、いいんだ。気にせんでくれ」
と沈んだ表情で言いました。
俺はちょっとやりすぎたかなと罪悪感を感じていました。
その次の日からです。
Aが学校にこなくなりました。
丁度インフルエンザが流行ってた時期だったので、風邪でも引いたのかなと思い、その時は別に気にしませんでした。
しかし、それからさらに3日たってもAは学校に来ませんでした。
携帯にも出ません。
流石に心配になり明日の学校帰りにでもAの家に行こう、と思いました。
その日の晩の事です。
俺の携帯に着信が来ました。
Aからです。
「おう、どうした?風邪でも引いたか?お陰でこっちは昼飯おごらずにすんだけどなーハハハ」
と冗談混じりに言ったのですが、Aは無言です。
ちょっと心配になり
「具合でも悪いんか?どーした?」
と聞くと、かすれるような声でAが言いました。
「・・・なぁ。この前の事、ホントに冗談だったよな?俺を怖がらせる為のウソだったんだよな?」
俺は、まだそんな事気にしてんのかこいつと思い、
「だから、全部ウソだって!この前も聞いたけど、本物の幽霊でも見たのかよ!?」
と聞くと、Aは暫く無言になり、こう呟きました。
「見た」
それを聞いて、俺も一瞬ビビッたんですが、もしかしたらAは、この前驚かされた仕返しを俺にしようと、ウソを言ってるんじゃないかとも思ったのです。
「またまた。今度は俺を怖がらせようとしてんだろ?それか、神経過敏になりすぎて幻覚でもみたんじゃねーの?それか悪夢とか」
「・・・俺も最初はそう思ったよ。だけど、あれから毎晩出るんだよ。最初は、夢の中だった。白目むいて、アゴがはずれんばかりの大口開けながら狂ったように笑う女が。・・・最初は夢見るだけだったけど、ここ2~3日、いつも深夜に目が覚めるんだよ。で、何か気配を感じて横を見ると、その女が隣に寝てんだよ・・・アッアッ!!アッアッ!!って狂ったように笑いながら!!もしかしたら、それも夢の一部かもしんないけど・・・お前、ホントに何も見てないんだよな!?俺もう、耐えられねーよ・・・」
俺は暫くの間、何も言葉が出ませんでした。
半分は、俺に仕返しをする為にウソを言ってるのだと思い、半分はあまりにも真剣にAが話しているので、本当の事ではないのかと・・・
でも、あの女は俺が想像で作りだしたモノなので、実在するわけがないのです。
「・・・とりあえず、明日学校出て来いよ」
そう言って、俺は電話を切りました。
次の日、Aは学校に来ました。
思いのほか顔色も良く、沈んだ感じもないので、
「あ~こいつやっぱり仕返しでウソついたんだなぁ~」
と俺は思いました。
Aは俺の姿を見つけると、笑いながら駆け寄って来ました。
「よう!」
「よう、じゃねーよお前。やっぱり昨日の話はデタラメだったんだな?」
そう俺が笑いながら言うと、Aは真剣な表情になり、こう言いました。
「いや、あれはウソじゃない。でも、俺はアイツにもう苦しめられなくてすむ。やっと解放されたよ」
「ハイハイ、もういいって。お前も大した役者だよな。でも、解放されたって何だよ?」
と俺が聞くと、Aがニヤリと笑いながらこう言いました。
「次はパパの所へ行く。そうあの女が言ってたから。んじゃ、気をつけろよな」
そう言いながら、Aは教室に入っていきました。
「一本とられた」
俺はそう思いました。
Aの話だと、俺の想像が作り上げたバケモノが、Aの所へ現れ、次に創造主である俺の所へ現れる、と言う事なんでしょう。
「Aもなかなか、味な仕返しの仕方するじゃないか」
と、俺は感心してしまいました。
実際、俺は少しゾッとしてしまったのですから。
しかし、恐怖はこれだけでは終わらなかったのです。
その日は飲み会があったので、俺が帰宅したのは深夜2時過ぎでした。
早く寝たかったので、速攻でベッドに倒れ込みました。
その時、ふと昼間のAが言った言葉を思い出してしまいました。
「次はパパの所に行くから」
いくら冗談だとはいえ気味が悪くなり、早く眠りにつこうと必死になりました。
どうやら酒も入ってた事もあって、いつの間にか俺は寝ていた様です。
ふと喉の乾きで目が覚めると、時刻は午前5時半過ぎでした。
当時は真冬だったので、明け方とはいえ外はまだ真っ暗です。
冷蔵庫のウーロン茶でも飲もうかと、ベッドから腰を上げた時、窓の外から奇妙な音が聞こえてきたのです。
「アッアーッアッアッアッアーッ」
皆さんは、
「明け方のハトの鳴き声」
を聞いたことがあるでしょうか?
一定の間隔で
「クックルークックルー」
みたいな感じで鳴いてますよね?
俺もハトの鳴き声は何度も聞いたことがあり、
「あぁ~ハトかな~」と
別に気にせずにいたんです。
そして、キッチンでウーロン茶を飲み、再びベッドに入り眠ろうとしました。
すると、またあの音が聞こえてくるのです。
「アッアーッアッアッアッアーッ」
と。
一定の間隔で。
しかも、心なしかさっきより音が大きくなった様な感じがしました。
うるさくて眠れないので、窓を開けてちょっとだけ大きな音でもたてて、ハトを追い払おうと思いました。
窓を開けると、すぐ目の前に小さな公園があります。
言い遅れましたが、当時の俺の家は新築コーポの1階でした。
不思議な事に、窓を開けるとハトの声は止まりました。
「人の気配を感じて逃げたのかな~」
と思い、窓を閉めようとすると、公園の入り口の所に人影が見えたのです。
まぁ明け方ですから、ジーさんバーさんが散歩でもしてるのかなとその時は思いました。
そして窓を閉めようとすると、またあの音が聞こえてきたのです。
「アッアーッアッアッアッアーッ」
一定の間隔で。
何度も何度も。
「うるせぇなぁ」
と俺は思い、
「ワッ!!」
と大声を出しました。
すると、またピタリと止まったのです。
今度こそビックリしてハトは逃げただろうと思いました。
その時、俺の視界の中で何かが動いたのです。
あの人影でした。
何か動きが奇妙なんです。
まるで「ケンケン」でもするみたいに、ヒョコヒョコ歩いてるんですよ。
左にグラグラ、右にグラグラみたいな感じで、重心が定まってない様な動きでした。
俺は
「何だ?酔っぱらいかなぁ~」
と思い、目が合ったりしたらイヤだったので、すぐ窓を閉めました。
そして、窓から背を向けた直後
「アッアッアッアッアッアッアッアッアッアッアッアッ!!!」
と窓のすぐ外であの音が聞こえたのです。
女の笑い声の様に聞こえました。
流石に怖くなり、焦ったのですが、
「明け方だった」
というのが俺を強気にさせたんだと思います。
あれが深夜とかだったら、ベッドでブルブル震えてるだけだったでしょう。
思いきって「ガラッ」と窓を強く開けました。
誰もいませんでした。
念のため、
「おい!誰かいるのか!?うるせーぞ!!」
と叫び、再び窓を閉めました。
そして、ベッドに戻ろうとしたその時、俺は凍り付きました。
ベッドに誰かいるのです。
真っ白なワンピースを着て、こちらに背を向けて座っている女が。
幻覚だ、と思いました。
昼間、Aが仕返しに俺に怖い話をしたので、その思いが生み出した幻覚だと。
「電気をつけたら消えるだろう」
とふと何の根拠もなく思った俺は、部屋の電気をつけました。
消えないのです。
蛍光灯に照らされたその女は、ソバージュがかった長髪の黒髪で、肩を震わせながらこちらに背を向けて、ベッドの上に座っていました。
「部屋を出ないとヤバい」
と思った俺は、玄関に向かおうとしたのですが、情けないことに腰が抜けたのか、足に力が入りません。
女の肩は、震え続けています。
やがて、「ヒャッ、ヒャッ」とまるで「しゃっくり」の様な声を女は出し始めました。
俺は大声で叫ぼうとしたのですが、まったく声が出ませんでした。
ちゃんと呼吸が出来ていたのかさえ思い出せません。
やがて「しゃっくり」の様な声は「アッアッアッアッアッ!!」とあの狂った笑い声に変わっていきました。
女が、ゆっくりとこちらに振り向こうとしています。
上体を不自然な形に曲げながら。
「見たら死ぬ」
直感でそう思ったのですが、瞼が閉じないのです。
「多分、俺の想像した通りの顔があるのだろう」
と、不思議にも俺は冷静に考えていました。
恐怖なんてもう通り越していたのだと思います。
女の顔が、完全に俺の方を向きました。
血走った白目。
不自然なまでに大きく開いた口。
アゴは、人間の状態でいうならば完全に外れている様子でした。
「あぁ、だからこいつあんな変な笑い声しか出せないのか」
と、自分でも意外なくらい冷静に感じました。
もう「殺される」と思ってましたから。
女は、肩を震わせながら
「アッアッアッアッアッ!!」
と狂った笑い声を上げつつ、俺の方に近づいて来ます。
体を左右にヒョコヒョコ揺らしながら。
そして、もうお互いの顔がくっつくすれすれの所まで近づいた女は、外れたアゴからヒューヒュー吐息を漏らしながら、ハッキリとこう言ったのです。
「わたしを作ってくれてありがとう」
ここからは後日談ですが、あれ以来あの女は俺の前に現れてないですし、霊障みたいな事も起こってません。
Aに話そうとしても、いつも話を濁されるというか反らされるみたいな感じで、もう話したくない様子でした。
Aも本当にあの女を見たのか、それとも作り話なのか、または俺の所だけに現れたのか、今となっては分かりません。
Aとは今でも友達です。

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