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水をくれ

2018/06/03

去年の夏、福井県の某キャンプ場に友人四人で行った。
そこは目の前がすぐ海水浴場になっているため、海のシーズンになると毎年このメンバーで訪れるキャンプ地だった。
夏の海を堪能し、夜はお決まりのバーベキュー。
ビールを飲みながら、話題は尽きることなく楽しい時間は過ぎていく。
周りの談笑する声も夜が更ける程に少なくなっていた。
そろそろ自分達も寝ようかということになり、テントにもぐりこむ。
波の音を聞きながら、ビールの酔いも手伝って吸い込まれるように眠りに落ちていった。
「おい!」
その声で目が覚めた。
「水をくれ。」
テントの入口を見ると、だれかが立っていて、入口から手だけをテント内に突き出してもう一度言った。
「水くれ。」
あまりに普通の会話の調子だったので
「ほらよっと。」
と自分の頭の上にあった水筒を手渡した。
先に起きた友達のうちのだれかだろう・・・
そう思ったから。
しかし、水筒を手渡してテント内に視線を戻してみると友人3人、しっかり寝てる。
入口を振り返ると、去っていく足音もなく、もうそこにはだれもいなかった。
すぐにテントからはいずりでて周りを見た。
明け方の静かなキャンプ場。
起き出ている者は自分しかいない。
よく考えるとゾクッとしそうだったので考えるのをやめ、友人を起すのも気が引けたので、砂浜を散歩して気を紛らすことにした。
散歩しなきゃよかった。
波打ち際で見つけたもの・・・俺の水筒・・・。

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