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平行世界

2022/07/10

よくある話で恐縮だけど、高校の頃に住んでた団地のエレベーターが時空移動?っていうのか?平行世界に行けるものだったのを思い出したわ。

そこは8階しかないのだが、ある条件がそろうと、エレベーターに「9」のボタンが現れる。おそらくこれを知っていたのは俺と男の友人AとBのみ。

まず条件を揃えて、9階にエレベーターで行き、あとは歩いて下まで降りる。エレベーターの扉が開くと最初は赤っぽいかんじがするんだが、階段で降りている間に戻っている。

これはやるたびに少しずつ世界が変わっていった。最初は小さなことで、学校の前の駄菓子屋が、普通の民家になってたり、クラスの担任が別のクラスの担任になってたり。平行世界を移動する俺たちだけがその変化を認識していた。

あるとき、驚いたのが平行世界に入ったとたん、Aが女になっていた。Aもさっきまでは男だった意識はあるが、すんなりと女になってることにも受け入れていた。

童貞だった俺とBは、女になったAの裸を見せてもらい、3Pもやってみた。満足した俺たちは、またエレベーターで遊んでいた。

だが、どんなに移動しても、Aは女から戻らない。
「おい、おい、やばいんじゃね?」
でもAは「別にいいよ」みたいな感じ。

何ども平行世界移動を繰り返したためか、アパートから見下ろす景色は記憶にある景色とかなり変わってた。遠くに高いビルとか3~4個そびえていたのを覚えている。

そして、事件が・・・。

エレベーターの扉があいたとたん、Bが消えてしまった。俺たちは慌てた。悪いことをしていたので神か何かがバツでも与えたのかと思った。

エレベーターの「9」は消えて、平行世界移動ができなくなってしまった。慌てた俺たちはBの家へ直行した。そこには知らない人が住んでいて、苗字も違う。

Bの共通の知り合いの友達の家に行くと、Bは2年前に親が離婚して引越したと言っていた。引っ越した場所も知らないらしい。「そういう世界なんだ」と思うしかなかった。

Aと別れ、家に帰ると、それまでいた弟がいなくなって、妹になっていた。妹は可愛かったけど、仲良かった弟が消えたことにオレはショックを受けて3日間寝込んでしまった。

エレベーターの「9」を出す条件は3人いたからできたのであって、Bがいなくなってしまってはできなかった。

学校に復帰して、Aと話すと、自分の家も相当変わってた、と言った。でも、自分は女として生きていくから問題ないとも言っていた。お前、強いなハハハと俺たちは笑った。

今ではAは俺の嫁さんだ。数年後、Bとも中学の同窓会で再会したんだが、エレベーターの話は忘れていた。忘れていたというか、彼はこの世界ではもともと関わらなかったんだろう。

その団地が数年前、壊された。もう二度とこんな体験できないだろうな。

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