夜間の巡回
2018/12/01
私は某大学の守衛をしています。
守衛とはいえ夜間見回りまで任されているので
一人で夜の学校内を歩かなければならないのです。
まぁ、深夜でも多くの研究室は人がいるので
助教授から珈琲を勧められたりと
比較的明るい仕事でもあるのですね。
しかし先週、怖い、というか
不可解な現象に遭遇してしまったのです。
深夜巡回は午前12時と決まっておりまして
携帯蛍光灯一本で建物内を巡回するのです。
いつもどおり、下の階から順次五階まで見て回るつもりでしたが、
その日はまっすぐ五階へと回りました。
外から窓を見上げたとき、
東の角の部屋の窓が開いていて
カーテンがひらひらと外に出ていたからなのです。
第三研修室は午後七時の巡回の時に
全ての窓の戸締まりを確認したので
開いているのが気になったのです。
しかし、五階には人の気配は無く、
件の第三研修室の引き戸もしっかり施錠されておりました。
ただ、中からは何と申しましょうか、
明らかに空気の流れが違うような気がするのです。
窓から入り込む風の所為だけではないような
尋常ではない雰囲気が。
私も決して肝が据わっている人間ではありませんので
手に持っている鍵を差し込む気にはなかなかなれませんでした。
守衛の仕事というのは
門の所の詰所に座っているモノだと勝手に思いこんでいたので
夜間見回りの怖さを味わうことはないと勝手に想像し、就職したのです。
所謂、恐がり─と呼ばれる部類の人間なのです。
しかし、放置することは出来ないので
帰りたい気持ちを堪え、鍵を回しました。
引き戸に手を掛け、そっと開いてみたのです。
ところが、予想に反して何の異変も見られないのです。
何も。
─窓も閉まっておりました。
確かにカーテンが翻っていたのも見たのですが。
…その部屋にはカーテンなど存在もしなかったのです。
ブラインドが上に上がったままになっておりました。
私は不意に怖くなり、鍵を閉め、一階の玄関に駆け戻り、
上を見上げて確認し直したのです。
五階角部屋の窓は閉まっておりました。
確認した通り。
カーテンも存在しておりません。
…しかし、ブラインドが 下りておりました。
その日の巡回はもう怖くなってしまい、
詰め所に戻り同僚を電話で呼び出し
急遽交代してもらいました。
どうやらその研修室は以前から
一寸変わったことが起こるらしいのですが
守衛仲間の中では「気にしない」という事になっていたそうです。