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生首みたい

2018/12/01

高校1年のときのこと。
学校の行事で合宿をすることになり、
私の学年は県内の大型キャンプ場に一泊しました。
現地に着いて割り振られた部屋に入り、
夜のキャンプファイヤーの準備までの時間を
めいめいで過ごしていたとき、
誰からともなく
「お化けの話をしようよ」
ということになりました。
部屋は定員8人の大部屋。
2段ベッドが4つある、
合宿所としてはよくある作りです。
私は窓際のベッドの2階を陣取り、
集まってきた同級生たちの話に耳を傾けていました。
ふと向かい側のベッドの一段目を見ると、
なんとなく違和感を感じました。
そこでは一人が寝そべっていて、
もう一人がその前に座っています。
寝そべっている子の胸の部分は、
座っている子の陰になっていて見えません。
見えないのは、その一部分だけのはずでした。
顔は、窓から差し込んでいる西日ではっきりと、
それこそ真っ白に浮き上がるほどよく見えていました。
首から胸にかけては、
どういう加減か真っ暗で見えません。
足元はやはり薄暗く、
ぼんやりと輪郭がわかるのみです。
「生首みたい…」
ついつい声に出して言ってしまいました。
とたんに、ざわめきが止まりました。
一瞬の沈黙の後、悲鳴が上がって、
みんなが次々と部屋から飛び出したんです。
私は少々面食らいながら、
あとに続いて廊下に出ました。
パニックの渦中では
泣き出している子もいました。
なんとなく悪いことをしたような気がして、
「ごめんね」と謝ると、複数の子が首を振ります。
「ううん。私たちもずっとそう思ってたの」
後で聞いたのですが、
その合宿所のある山には滝があって、
よく人が飛び降りるのだそうです。
数年まえには珍しく女性の自殺があったそうで、
それから目撃談が相次いでいるとか。
滝の下にある大岩に
顔面からぶつかっていったという話ですから、そのときも、
砕けてしまった頭を見つけたかったのかもしれません。
余談として。
キャンプファイヤーの最中に、
火の中に、何人もの苦悶の顔を見つけた私は、
その夜熱を出しました。
後日現像された写真には、
一人の女生徒の後頭部に
髪の長い女性の頭蓋骨が映っていました。
中部地方にある「県○の森」に行くときにはご用心ください。

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