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足の悪い祖母

2022/04/16

この前父方の田舎に帰ったとき近所のスーパーでガキの頃の親友Aに会った。

俺が小学生の頃に引っ越して以来10年以上だったが、当時の面影がそのままでお互いにすぐに気が付いた。

その時は久しぶり、元気か?なんて軽く話して、夜に呑みながらゆっくり話そうって約束して別れた。

ウチに帰ってバーちゃんにAに会ったと話すと、様子はどうだった?とか変わりは無かったか?とすごく心配そうに聞いてきた。

昔から足が悪く、ほとんど外に出ないバーちゃんにとってはよくウチに遊びに来てたAは自分の孫も同然で気になるのだろう。

Aが元気そうだった事と夜に約束している事を話すと、やけどの具合はどうなのか?と聞いてきた。

俺が引っ越してから間もなくしてAの家で火事が起きた
深夜の出火で原因は不明。それ以前にも近所で数件の不審火が相次いでいたため放火が疑われたが犯人は未だに見つかっていない。

冬場の乾燥した風に煽られて木造の建物は5分とたたずに炎に包まれ、程なく焼け落ちたそうだ。この火事で家屋は全焼、Aは奇跡的に助かったものの両親を亡くし足にひどい火傷を負ったのだという。

バーちゃんに言われるまで俺はその事をすっかり忘れていた。確か運動機能に障害は残らないという話だったなと思いつつも、酒の席で具合を聞いてみようと思った。

その日の夕方、居間でテレビを見ているとAから電話がかかってきた。ゆっくり飲みたいからという事でAの家で飲む事になった。

Aはいま火事で焼け落ちた実家の跡地にアパートを建ててその1階に住んでいるという事らしい。俺の家からAの家までは歩いて15分程の距離だ。俺は今から向かうと伝えて電話を切り家を出た。

出掛けにバーちゃんが気を付けて。とか、飲み過ぎないようにね。とか声を掛けてくれた。親から言われると小うるさいことでもバーちゃんに言われると嬉しいもんだと思う。

不自由な足を引きずりながら玄関まで見送ってくれたりして、孫が酒を飲むというのがそんなに心配なのだろうか?

Aの家に向かう途中でスーパーに寄ってビールとつまみを買い込む。昔はあのスーパーももっと大きな店に見えてたのになぁ~なんて考えながら歩いているうちにAのアパートに着いた。

1階の角部屋、101と書かれたインターホンを押すとすぐにAが出て招き入れてくれた。部屋に入り腰を落ち着けると俺たちは早速ビールを開けて飲み始める。そしてお互いに今何をしてるとか、俺が転校した後の事を互いに話したりした。

両親を火事で亡くし住む家も失ったAは隣町の親戚の家で成人するまで過ごした。親戚家族はAの境遇に同情的で非常によくしてくれたらしい。

そして成人すると、亡くなった両親の遺産や支払われた保険金など幾らかのまとまった金を手にし、ソレを頭金にこのアパートを建てたそうだ。

老後は家賃収入と年金で暮らすんだ~などとAが話すのを聞きながら、俺は少し羨ましく思いつつも、Aが元気で暮らしてる事を知って安心した。

そして同時にバーちゃんがAの火傷を心配していた事を思い出す。遠慮がちに火傷の事を切り出すと、傷跡は残っているが生活に支障はないと笑いながら答えた。

俺はホッとしてバーちゃんもとても気に掛けていたと告げると、Aは急に真面目な顔になって俺に頭を下げた。

少し驚いて話を聞くと、火事のときバーちゃんはいち早く現場に駆けつけて、Aが病院に搬送されるのに付き添ったらしい。そしてAの親戚が連絡を受けて到着するまで病室で待ち続けた。

Aは「お前のバーちゃんが居てくれたから少しだけ安心した。本当に感謝してる」と話し、目に涙を浮かべながら再び頭を下げた。

俺は初めて聞く話に驚きながら、足の悪かった祖母を思った。

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