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陰陽師の修行をしていた頃

2020/11/04

怖くないかもしれませんが、取り合えず私が若かりし頃のお話を・・・
私がまだ師匠の元で修行をしていた頃の話です。
ある日師匠の家から自宅へ帰る途中街を歩いていると中年の男性が私の前にいました。
霊力を持つ私にはその男性の背中に黒いモノが憑いているのが一目でわかりました。
そしてそれが関わり合いにはなりたくはないタイプのモノともわかりました。
しかしこの道で食べていこうと志していた私はその人を見捨てるわけにはいかず、意を決してその男性に声をかけることにしました。
「もしもし、なにか悩んではいませんか?」
「なんだよ、あんた、宗教の勧誘かよ?」
「違いますよ」(ここで少しムカツキました)
男性に憑いているモノをよくよく観察してみますと黒いモヤが彼の背中を覆っていて、そのモヤの中に本体がいるなと感じ取りました。
「私はこれこれこういったものです。あなたの背中にタチの悪いものが憑いているのでお払いしたいのですが」
「冗談じゃないよ! 急になに言うんだよ!あんた。」
街中で男性は大きな声で叫びました。
「すいません、じゃあそこの喫茶店ででも・・・」
「ふざけないでくれよ!セールスか?なんなんだよ!」
男性は急ぎ足で私から遠ざかって行きました。
師匠の教えの中に「発つ者は追わず」というモノがありましたが私はおせっかいなのかその人を追っていきました。
男性は「いい加減にしろ!」と言いますが放ってはおけません。
その黒いモヤはかなりの毒気を含んでおりましたから。
「あなたはこのままでは取り殺されるかもしれない! その背中のモノは危険すぎる!」
私は珍しく叫びました。
「・・・背中? あんた、なんでわかるんだよ? なぁ、あんたか?あんたが俺をこんなにしたのか?おい、答えろよ? おい!」
男性は血相を変えて私に掴みかかりました。
私は「落ちつきなさい、まずはいつからそうなったのかそれを教えてください。」
と男性をなだめました。
男性は、いつからなったのかはわからないと言いました。
何もしないのにあんなに危険な毒気が憑くはずはないと思いつつ、私ではどうすることもできないので彼を師匠の家へと連れていきました。
家に付き、事情を言うと師匠は早速彼を見ようと言ってくださいました。
嫌がる男性の服を脱がせるとその背中には見るも無残にも、皮が爛れていました。
「よくもまぁこんなになるまで放っといたもんだ・・・風呂に入ると染みるだろう?」
男性ははにかみながら
「ええ、まぁ・・・先生治りますか?」
「私は医者ではないんだが・・・。」
師匠は苦い顔をし、続けました。
「まぁ、払ってあげましょう。」
師匠はその男性の後ろに立つと呪文を唱え始めました。
そして、私に卵と酢を持ってくるように指示しました。
私がそれらの品物を取って戻ってきた時に見たモノは・・・。
周りに黒いモヤの毒気を撒き散らしながら男性の背中から体をだし、苦しそうに体をくねらせている赤紫色の巨大なムカデでした。
師匠は私から卵と酢を受け取ると、呪文を唱えながら、ムカデに卵をぶつけ、その後で酢をふりかけました。
「ギュキキィィィィィイィィィィ」
奇妙な声をあげ、巨大なムカデは男性の体から分離し、その後で師匠がまた呪文を唱えるとムカデは燃えて消え去りました。(その中年男性には見えなかったでしょうが。)

私は男性に服を着せました。
男性は「体が軽くなりました。ありがとうございます。」と師匠に頭を下げました。
そして代金を聞いてきた男性に師匠は言いました
「お代はいりません。 その代わり、それをどこで拾ったか教えなさい。」
男性は普段通り生活をしているといつの間にかああなっていたとしか言いません。
師匠は「では普段の生活を言ってみなさい。」と尋ねました。
男性がボソッと答えた事は 彼は3週間に一度、女性を買うそうです。
そして師匠はムカデの正体を語り出しました。
ムカデは『病魔』だったそうです。
師匠と男性の話を照らし合わせると、女性を買った時に性病を染され病院に行く。
それを繰り返しているうちに病魔に魅入られたそうです。

こんなことを言うと男性に失礼かもしれませんが、あの病魔は健康な体であればまず憑かないタイプのものです。
憑かれたとしても自然の産物を食べていれば下ろせたのですが、男性はインスタントしか食べていなかった。
そうした事が病魔をつけ上がらせ男性の生気を吸いつづけ、私が「関わり合いにはなりたくない」と思うほど毒気を吐き出すレベルにまで成長してしまったのです。
みなさんも健全な生活を送りましょう。

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