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私の田舎では固芥(コッケ)さんと言います

2020/07/02

コケシの話が怖いみたいですね。
あんまり自分の出た地域のことは言いたくないんですけど…
私の田舎ではコッケさんといって、コケシのような呼び方をすると大人にそうとうおこられました。
中学生に上がりたての頃、半端なエロ本知識で「電動こけし」という単語を知ったクラスの友達がコケシコケシと連呼してるのを指副担に見つかりバカスカ殴られてました。
あ、指副担というのは生活指導副担という意味で別に何の教科を担当してたわけでもないです。
学校行事の中で踊りみたいなものは指副担の先生が指揮をとってました。
運動会で必ずメイポールの祭りみたいな踊りを伝統的にやらされてたのですがこれは指副担の先生の独壇場でした。

高校に入って地元の青年会に入るとコッケさんのあらましは聞かされるのですが、それもまぁコッケさんという地神さんは伝統だから行事は守らないといけないみたいな感じの話で要領を得ません。
地域に大きな寺社や宗教施設がないし、中学高校にもなるとさすがにいろいろヘンなうわさが立ってました。

・中学の裏にある井戸が本尊で、毎年一人生贄にされる
・高校出て町に出るときは井戸に後ろ髪を納めさせられる

噂は噂でしたけど、実際私がいたころは後ろ髪を伸ばした奴が多かったです。
単なるヤンキーだったのかもしれないですけど。今は帰らないのでどうかわかりません。
今、同郷の女の子が近くのマンションに住んでて、そのこの叔父さんが指副担やってたんですけど、コケシの話題が出てたので、なんか関係ありそうだったので、聞いてみました。
私たちがコッケと読んでいるのは「固芥」と書くらしいです。
明治に入ってすぐのころ、飢饉と水害の土砂崩れで村が外部との交通が遮断されたままひと冬放置されたことがあったそうです。
十二月二十八日のこと(旧暦かどうか不明)、知恵の遅れた七歳の子供が村の地区の備蓄の穀物を水に戻して食べてしまったそうなのでした。
その子供は村の水番が妹との間につくった子供で(本当かどうかはわかりませんが、水車小屋のような場所があったのですぐそういう、性的な噂が立てられた)、水番が罪を犯すと翌年は日照りになるという迷信がまだ残っていました。
水番は責任感が強かったので、子供を殺して村に詫びようとしたそうです。

実際「子供を殺せ」と書いた無記名の手紙を投げ入れるような嫌がらせが、すぐ始まったそうです。
水番に不利に扱われていた家も多かったし、実際、穀物の管理責任は水番にあるので、そういうのがおきても仕方ない状況ではあったそうです。
年が明けて一月二十八日の深夜、いくら何でも水番が自分の息子を殺すのを容認はできませんので、このことは村全体で考えようと談判していたところだったのですが、水番の妻が泣きながら世話役の家に走りこんで来て亭主が首を括ったので来てくれと言うのです。

水番の家に行くと井戸の上に「井」の字に竹を渡してそこから首を吊るすようにして絶命している水番がいました。
あまりの酷さに世話役たちが顔を背けているとくだんの息子が傍らから世話役の袖を引いて、
「みましたか!みましたか!」
と、目をらんらんと輝かせて尋ねるのだそうです。
この子はもはや正気ではないとはわかっていました。
が、当時の解釈ではこれは水番の相反する気持ちが子の魂は滅ぼしても子の肉体は母のために生かしておいてやりたいという願いになり、親子の魂が入れ替わったのだというのが支配的でした。
間引きのために子供を殺したことはありませんでしたが、このとき村で初めてこの子供を「殺そう」という結論が出たのだそうです。

横糸を斜めに織った長い綿布で首を包んで布に少しずつ水を吸わせて誰も手をかけないうちに殺そうということになりました。
しかしそこは素人考えですので首は絞まってもなかなか絶命しません。
子供は父と同じ顔で「誰じゃ、食ったのは誰じゃ」と声を上げていました。

恐れおののいた村人は父が死んだのと同じように井戸に竹を渡してそこから子供を吊るしました。
ものすごい形相でにらむのでまぶたの上から縦に竹串を通しました。
子供は数日糞便を垂れ流して暴れたのち絶命しました。
その明けた年は飲み水から病気が発生し多くの人が命を失いました。
さらに本当に穀物を食ったのがこの子供ではなく世話役の十三になる子供だったことがわかったのだそうです。
このとき世話役は躊躇なくわが子を同じ方法で吊るしたのだそうです。
あくる年の一月二十八日のことだそうです。

「…というわけで、一月二十八日はコッケさんの日になったんですよ」
「はー、なるほど。命日なわけな」
うちで飯を食べてもらいながら、彼女(指副担の姪っこ)に、教えてもらいました。
「だから固芥忌(コケキ)っていうのが正しいんですよ。」
「運動会の行事も意味わかるとひどいね」
「…村人全員で子供をシめる儀礼ですからね。本来こういう形でやさしく弔ってあげたのにという偽善ですよね」
「うん」(運動会の踊りはメイポールMaypoleの祭りに似てますので知らない人は検索してもらうとどういう形なのかわかります。中央のポールが子供です)
「…あとですね、これ、私一人で気づいたんですけど」
彼女はペンを取ってチラシの裏に「芥」の字を書きました。
「おお、28やん。オレも今気づいた」
くさかんむりと、その下の八の字で、二十八と読めます。
「え?」
彼女はきょとんとしていました。
「いやだから、にじゅうとはちで、その命日を表してるんでしょ?」
「…ほんとだぁ」
「え、違うの?」
「いや、そっちが正しいんですよねたぶん」
「何よ、教えてよ」
「いや、いいです」
しばらく押し問答した末、彼女は折れて文字を書き足しました。
「これね、縦書きなんですよ」

 固
 芥

「目をつぶされた子供が竹の枠に首から下がってるの、わかるでしょ?」

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