窓はあるけど入り口の無い部屋があった
2019/09/30
俺の家、入り口の無い部屋があった。
外から見ると、一部屋分の区画があるのがわかる。
窓もあったので、
ここに部屋があるんだなとすぐにわかった。
小さい頃窓から覗いてみたりしたけど、
内側から板が打ち付けてあって中は見えない。
父ちゃんと母ちゃんに聞いても、
「昔からああだ」
と言ってよく知らない様子。
その部屋の区画に至る廊下の先は土壁になっていて、
側面の壁と質が違ったから、
ひょっとしたら入り口を塞ぐために後から壁作ったのかな、
と思っていた。
ずっと昔から興味の対象だったんで、
就職して初任給でしたことは、
工務店呼んでその壁を壊すことだった。
父ちゃんと母ちゃんも興味があったみたいで、
やってみろとのこと。
壁を崩すと、木を格子状に組んだ戸があった。
開けて中に入ると、4畳くらいの広さの部屋に、
箪笥が一つ、ちゃぶ台が一つ、
さらにちゃぶ台の前には、
背丈が40~50cmくらいの和風のお人形が
ちょこんと座らせられていた。
ちゃぶ台の上には皿がいくつか置かれ、
いつのものかわからない料理?が干からびていた。
窓に打ち付けられた板の隙間から日の光が射し込んで、
ちょっと綺麗だった。
箪笥の中はほとんど空だったけど、
一番下の段に着物が数着入っていた。
と言ってもサイズは小さく、
どうやらお人形用のようだった。
結局、何のための部屋なのか判らずじまい。
じいちゃんばあちゃんはもういないし、
父ちゃん母ちゃんはやっぱり知らない。
ともかくちょっとお人形がかわいそうだったので、
部屋を掃除して窓の板も外して、
新しい着物を着せてあげて、
何となく毎日ご飯を持っていっている。
(でも以来、特にいいことと言えることは起こってない。
やっぱり偶然だったのかね?)
ちょっと怖いというか神秘的な雰囲気だったので、
お人形を追い出して部屋を別のことに使うことはしなかった。
それからしばらく、親戚の人の病気が治ったり、
弟が結婚したりといいことが続いた。
俺は勝手にあの部屋とお人形のご利益だと思っているので、
今も欠かさずご飯を持っていっている。