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近所の古い家に住んでる子

2019/04/27

俺、子供時代によく遊んだ子がいたんだわ。
近所の古い家に住んでる子ってことしか覚えてないけど、
白っぽい服ばっかり着てた気がする。
田舎なもんだから、ゲームとかじゃなくて
鬼ごっことかザリガニ釣りみたいなのばっかでな。
親は都会の方にいて、ばーちゃんかなんかと一緒に暮らしてるって記憶してる。
けっこう仲良かったはずなんだけど、
小学校の3年生くらいから遊んだ覚えが全然ないの。
名前も覚えてないけど、別の学区の子とか、
友達の友達だと名前も知らないまま遊んでたから、
そんなとこかなと思ってた。
んで、中学入っちゃうと、昔の友達ってなんかこう、
会ってもどうしていいかわかんないし、そのまま忘れてた。
んで、連休前倒しで久々に田舎に帰ったんだ。
そん時俺の子供時代の話になって、
「そういやあの家に住んでた子、今どうしてんの?」
って聞いたのね。
そしたら俺のばーちゃんとおかんが、
「あの家はずっと空き家で誰も住んでない」
って言うのよ。
でも俺、その子が空き家のはずの家から出て来た記憶があるのね。
「あそぼー」って声かけて、「うん」って駆け出してくる記憶がはっきりあるのよ。
でも家族はありえないって言うわけ。
怖くなったんで、ずっと地元にいる幼馴染に会いに行って、その子の話をしたんだ。
そしたら、そいつも「そんな子知らない」って言うんだよ。
そいつとも何度も遊んでるはずなのに。
うわーオカルトかよと思ってガクブルしてたんだけど、
帰る前日に最寄り駅で、同い年くらいの男にいきなり
「○○君だよね」って声かけられたんだわ。
誰だろうと思ったら、あの家のあの子だって。
なんだよ実在してたんじゃんってそん時は思ったさ。
連休のせいでバスの本数がなくって、
歩いて帰りながら昔話に花咲かせたよ。
「今何してんの」って聞いたら、
「病気で何もできない」みたいな答えだった。
病気で学校ほとんど行ってなかったみたいな話も聞いた。
それ以上深く聞けなくて、
俺がお祭りでゲットして分けてあげたスーパーボールの話とか、
ヤギに紙食わせようとして襲われたとか、
懐かしい話だけした。
で、家の近くまで来たら、
そいつ「じゃあ僕こっちだから」って、
例の空き家の方に歩いてくの。
「またね」って笑顔でバイバイすんの。
なんか『そっち空き家だろ』って言えなくて見送ってたら、
ちゃんと空き家の門の中に入ってったんだ。
でもさ、よく見たらその空き家、マジで空き家。
窓に板とか釘で打ってあんの。
壁も蔦這っちゃって緑色。
ポストなんか落ちてどっか行っちゃって、
四角い錆びの跡しか残ってないの。
かなり怖くて即逃げた。
家に帰ってから、あの家で変な事件とかなかったって家族に聞いたら、別にないって。
でも、おかんとだべってた隣おばちゃんが思い出したんだ。
俺が小学校入る前に一回だけ、あの空き家を別荘みたいにして、
夏の数日だけ家族連れが泊まりに来てたって。
俺、そん時にあの子と遊んでたらしい。
でも家はその後すぐ売られちゃって、
家族連れとあの子が来たのはその一回きりらしい。
いや、俺小学校入ってからもその子と遊んだって。
ランドセル背負ってたもん、
給食袋に捕まえたカエル入れておかんにどつかれたもん、間違いねーよ。
帰る前に空き家に寄ってみたけど、
門に鍵かかっててすごい錆びで開かなかった。
あいつが開けた時は、すーっと普通に開いてたはずなんだけど。
こえーので、今年の夏は帰郷しないことにした。

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