ゴーストライダー
2019/08/29
ある峠をバイク友達とふたりで走ってたんだ。
そこは夜になるとゴーストライダーがあらわれるって場所で、
俺の友達はそれと勝負するつもりできてた。
で、夜になって俺たちが走り始めると、
前方からマフラーの音がきこえてきた。
ゴーストライダーはリムからなにまで真っ黒に塗装されてるって噂で、
一目みればすぐわかる。
友達はすごい速さで、俺はすぐおいてかれた。
少ししたらバチンッてでかい音が聞こえて、
俺がおいつくとそこには友達が呆然と立ち尽くしていた。
「あと少しだったんだが、ブレーキ壊れちまった」
みるとネジがなくなり不自然にリアが壊れていた。
「あとな、あのゴーストライダーの噂、知ってるか?」
俺はゴーストライダーの話はそいつから聞いていたから、
そのぶんしか知らない。
「この峠にでるゴーストライダーってのはな、
首無しライダーのことらしいんだ・・・」
峠をでたところにはバイク屋があり、
夜だというのに頼んだらあけてくれた。
それでリアブレーキをみせるとバイク屋が話し始めた。
「やっぱな、この時期は多いんだよ。首無しライダー、だろ?」
僕たちの顔をみて息を吐くと続けた。
「あのカーブのあとな、お前がブレーキ壊されたあとのカーブな、
ガードレールがへこんでて、すげえ危険なんだ。
首無しライダーに感謝しろよ、崖から落ちたら死んじまう、はは」
バイク屋は笑って話した。
去りぎわ、バイク屋は言った。
「次は首無しライダーにとめられないライテクつけてから出直しな」
僕たちは次の週もまたそこにでかけた。
今回は勝負でなく、ガードレールをみに。
確かにガードレールはへこんでいて、
少しでもスピードをだしすぎたら崖下へ一直線だ。
ガードレールの下に花がおいてある。
僕たちはしゃがみこみガードレールをみつめた。
ん?
ガードレールの裏側になにか書いてあることに気が付いた。
『今度こそおいついてやる』
『ブレーキ壊すなよ』
そんな文がたくさんあるなか、
一際目立つ一文が。
『ありがとうございました。○○』
○○には名前が書いてあり、
日本を代表するレーサーの名前だった。
バイク屋に詳しい話を聞きに行くと、
ガードレール裏をみた話をすると快く話しはじめてくれた。
「こっちこい」
倉庫の片隅に案内され、シートをめくったバイク屋。
そこには真っ黒な壊れたバイクが横たわっていた。
「お前がみたの、これだろ」
友達がうなずく。
「俺の常連客でな、死んじまったんだよ。
いまだに幽霊で走ってるらしいけど、
カーブから先にはついてこねーんだと」
バイク屋は今にも泣きそうだ。
○○とバイク屋が写ってる写真をみつけ、
バイク屋にガードレール裏の話をしてみた。
「あぁ、知ってるよ、
○○もブレーキ壊されたっつってうちきたんだ。
ただな、ガードレール裏みりゃわかるが、○○は勝ったんだよ。
○○がな、カーブを終えたらバイクも、
マフラーの音も消えたんだと」