すーっ、ことん
2019/08/25
小さい頃祖父から聞いた話。
旅人が山中の家に一夜の宿を乞うた。
主人は泊めるのは構わないが、
近隣の者に不幸があって夜は家を空けなければならない。
夜更けまでには帰ってくるので
留守を預かってほしいという。
旅人は泊めてもらえるのならば、
と頼みを受けた。
主人が出かけてしばらく、
旅人は囲炉裏端に座っていたが、奥の部屋で
「すーっ、ことん」
と音がした。
襖を引く音だったが、
奥の部屋どころか家には旅人しかいない。
しばらくするとまた
「すーっ、ことん」
またしばらくすると
「すーっ、ことん」
恐る恐る奥の部屋を覗いてもやはり誰もいない。
音はその後もえんえんとつづく。
旅人は怖くなったが、
夜の山中に飛び出すこともできず、
囲炉裏端で布団をかぶって震えていた。
どれほどたったか、主人が帰ってきた。
旅人が主人の留守にあったことを話すと、
主人は笑って言った。
「そりゃあ『すーっことん』です。
音がするだけで何も悪さはしませんよ」
これ、どこかの民話なのか
祖父の創作なのかも分からないんだ。
地元の民話集めた本でも見たことないし。
誰か似たような話知らない?
それにしても今思うとなんかまぬけな名前。