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猫の名前はコハク

2019/08/19

小さい頃親友がいた。
親友と言っても人間じゃなくて猫。
普通の猫より一回り程大きくて、いつも堤防にある陸橋の下にいた。
いつの間にか仲良くなっていた俺達。
いつもキャッキャはしゃいでた俺を、目を細めながら見守っててくれていた。
友達と言うより、婆ちゃんと孫みたいな感じ。
猫の名前はコハク。
ずっと昔に人に飼われていたらしい。
俺達は会話ができた。
疑問は持たなかった。
いつも言われる言葉は「車には気をつけてね」そんな日々が半年程続いたとある日、俺は車にはねられた。
学校から帰る途中だった。
俺は全く覚えてないが全身を強く打っていて、脳死もしくは全身麻痺は覚悟してくださいと言われたらしい。
意識が戻っても重い後遺症は残るとのことだった。
俺は昏睡状態の中、夢を見た。
20畳程の何もない部屋にいた。
ドアも窓もない部屋の隅っこで怖くて震えてたんだけど、急に部屋が温かいオレンジ色に包まれて、どこからか声がした。
「○○君」俺を呼ぶ声だ。
いつの間にか出来ていたドアを開け外に出ると、いつもの堤防だった。
でも音がしない。
家に帰ろうと振り返るとコハクがいた。
他にもコハクに似た猫がたくさん。
猫達は何も言わず道を空けてくれた。
「コハク、ありがとう!」と言い駆け出すと、急に空気が変わり事故現場にいた。
そこには横たわる俺と、その横には真っ黒の大きな影。
周りにはさっきの猫たち。
しきりに「シャー!」とか言いながら威嚇してた。
そこで目が覚めた。
俺は病院を抜け出し、堤防に向かった事故現場の影より、コハクが気になったなんとなく予想はしていたけどコハクはいなかった。
日が暮れるまでそこで泣いていた俺を警察が見付け、病院に帰された。
怖くはないけど、コハクは俺を助けてくれたんだと思ってる。
小さい頃の記憶はこれしかないんだ。
事故が原因か知らんけど、俺が覚えてるのは小学5年から。

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