パラレルワールド
2019/07/23
よく時空をこえたとか、
ちょっと違う異世界を垣間見たとかっていう体験談が書かれるけど、
俺もあるんだよね。
っていうか今まさに…なんだけどさ。
2年前の7月28日、俺は大阪にいたんだよ。
憂鬱な月曜日で、夏休みも貰えなくて実家にも帰れない。
イライラしていた朝だった。
狭山の金剛駅から天下茶屋まで向う道中に、不思議な事が起ったんだよ。
携帯でゲームに夢中になっていると、なんか妙なんだよね。
集中してたのもあるんけど、騒がしくて当然の車内が妙に静かでさ。
押し合いへしあいしていた車内が妙に空いてるような感じがして、
周りをみると誰もいないんだよ。
誰も。
通勤時間の南海本線だ。
絶対にありえない。
電車も気付いたときには止まっていて、ドアが開いていた。
駅なのは間違いないんだが、駅名がわからない。
というか読めないんだよ。
知ってる漢字に見えるんだけど、読み方が全く思い出せないし、
字を記憶しようとしてもすぐ忘れて覚えられない。
しばらく悩んだあと、駅の外に向って歩きだしたんだ。
駅を出ると、町並み的には普通の大阪の下町っていう感じなんだが、俺はその町を知らない。
こんなところあったのかと思いながら、
とりあえず会社に電話をしようと思ったんだ。
電車が止った状態で動かない。
事実確認をしようとしてもアナウンスもないし駅員も見えないと。
携帯は圏外になって、公衆電話もない。
大衆食堂のような小さな店があったの。
電話を借りようと思ったが、中には誰もいない…
そのとき、劇場版ドラエモンの、鏡面世界の話を思い出してしまった。
とりあえず、引きかえして駅に戻って、改札を跨いで越えて
(改札が動いてない)、
まだ止まったままの電車の中に戻ろうとしたんだ。
ホームについて電車をみると、人が一人いるんだ。
形容しがたいんだけど、
厚手のコートを着た紳士っぽい感じの風体で中年っぽい。
あっ、と思って声をかけようとしたんだ。
そしたらそのオッサンが話し始めた。
いや、厳密にいうと、そのおっさんの口は動いてないし、
口から音が出ている感じじゃなくて、両方の耳元で、
それぞれ聞こえるみたいな、そんな感じで聞こえるんだ。
おっさん曰く、
「もう戻してあげられないから、代りにこちらで」
と一言。
なんのこっちゃ??と思ったけど、
突然目の前でバクチクが弾けたみたいな、
ちかっとした衝撃を受けたんだ。
とっさに目をつぶって、そして開けると職場にいた。
仕事をしている途中だった。
時間は9:02で、遅刻はしてないみたいだ。
普段はどんなに急いでもギリギリなんだけど、俺に息の乱れもない。
ない…あれ?
なんか俺いつもの俺じゃない…?
と思ってトイレにいって鏡をみると、
俺なんだけどなんか違うんだよね。
目元の印象とか髪型とか。
若返ったとか老けたとかじゃなくて、
非常にそっくりな他人みたいな…そんな感じ。
職場の人達もそう。
なんかみんな微妙に違う。
その仕事をやめて今は故郷で働いているが、親もなんか記憶と違うんだ。
老けたとかじゃない…。
全てに違和感を感じてるが、何の支障もなく平穏で幸せ。
でも俺が元々いた世界とは絶対に違う。
それが今のこっちの世界…