お地蔵様の目
2019/07/21
子供の頃、母親のこぐ自転車の後ろに乗って近くの海岸に行った。
夕焼けがきれいだった。
すっかり暗くなった帰り道、ふと見ると、
道の塀のところにポツンとおかれたお地蔵様の目が、
真っ赤に光り輝いている。
「おかあさーん、お地蔵様の目が光ってるよ」
と言うと、
「それはね、海で死んだ人の霊が、
悪いことしないように見張っているんだよ」
と教えてくれた。
数年後、ふと思い出して、母にそのことを話すと、
「知らない。そんなこと言ってない」
との答え。
確かに母は霊の話などが大嫌いな人だ。
それによく思い出してみると、あのときの声は、
あきらかに母のものではないドスのきいた男の声だった…
俺は今でも、そのお地蔵様の前を通るときには、
手を合わせるようにしている。