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奥さんがいなくなった

2019/07/07

以前派遣されていた会社での話。
派遣先の方に
「アレルギーとか体質って1晩で治るものなのか?」
と聞かれたことがある。
自分はアレルギー持ちなので、
「1晩でなることはあっても、治ることは殆どないと思う」
と答えた。
その後その方(以後Aさん)は欝気味になっていって、
先月ついに会社を辞めてしまった。
会社を辞める前に、
疲れるんじゃないですか?
どうしたんですか?
やめちゃってどうするんですか?
と失礼ながら聞いた。
Aさんは奥さんがいなくなったという。
以下Aさんの話。
ある日、Aさんが夜遅く会社から帰ったら、
部屋に奥さんがいなかった。
部屋も真っ暗で誰も居ない様に見える。
トイレの電気も消えていたし、確認したが人はいなかった。
疲れて寝てしまったのか?と寝室を見ても居ないし、
外出するという連絡もなかった。
狭いマンションで二人暮らしだから、隠れるところはない。
リビングの電気をつけてテレビをつけると、
トイレのドアが開く音がして奥さんが出てきた。
トイレは誰も居ないのを確認したのに。
どこ行ってたの?と聞くと、どこも行ってないと言う。
家に居た、トイレに行って出てきたらAさんが帰っていたと言う。
その日から奥さんの様子がおかしい。
外見は変わっていないが、今までと何かが違う。
でも何が違うのかわからない。
2~3日たって、奥さんが料理をしているのをふと見た。
奥さんが玉ねぎを刻んでいる。
Aさんの記憶の奥さんは、
玉ねぎとかねぎ類を切るときに涙が出るのレベルではなく、
顔が真っ赤に腫れあがってしまう体質だったという。
今までねぎ類、特に玉ねぎを切るときは、
ゴーグルと三角巾使って顔全体を覆い隠して切るか、
Aさんを呼んでかわりに切ってもらっていたという。
でも今目の前の奥さんは、
玉ねぎをなにもせずにみじん切りしている。
奥さんに玉ねぎ刻んで大丈夫なの?と聞くと、
にこっと笑って作業に戻ったという。
何かが変な気がすると気になりだすと、
何もかもが疑わしく思えてくる。
しかし、疑っている自分がおかしい気もする。
そんな思いが回って気がおかしくなりそうな気がするという。
Aさんが会社を辞める1ヶ月ほど前、
奥さんが居なくなったと言う。
夜先に
「お風呂入るね」
と言って脱衣所にいったきり、忽然といなくなった。
脱衣所と風呂場には窓もなく、
天井に通気孔があるだけ。
玄関も窓も開いた形跡がない。
携帯電話に電話をしたが、居間に置き去りにされていた。
Aさんは慌てて奥さんの実家に電話をしたが誰も出ない。
Aさんはパニックになって、
何故か寝て目が覚めれば元通りかもと考え
布団に入ったらしい。
朝目が覚めても当然奥さんはいない。
奥さんの職場に連絡をしてみると、
そんな人は前からいませんと言われたという。
奥さんの実家に行ってみたが、
前にも何度か行ったことがある場所なのに、
そこには別の人が住んでいた。
もう3年ほど前からその場所に住んでいるという。
まるで奥さんは存在しなかったようになっていた、と言う。
捜索願とかも出していたらしいんだけど、
結局私が辞めるまでに見つかったという話は聞かなかった。

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