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右側

2019/07/01

俺が生まれる前の親父の話。
家では犬を飼っていたんだけど、
散歩は親父の仕事で、毎日決った時間、
決ったルートを通っていたそうだ。
犬は決って親父の左側を歩き、
決して右側を歩く事はしなかったんだそうだ。
これは親父が躾けたわけじゃなく、
いつの間にかそうなっていたらしい。
それが不思議で、無理に回り込んで犬が右側に来るようにしてみたらしいが、
ことごとく左側に戻ってくる。
それがかわいくて、それ以降はずっと左側。
ところがある日、犬が右側に。
親父も驚いたし違和感もあるので、
何度か左にしてみたが、やはり右側へ。
不思議に思ったけど散歩へ出かけた。
最初の路地を右へ曲がろうとした時、
右から来た車に犬がはねられ即死。
親父は咄嗟に、俺の身代りになる為に右側にきたんだと思ったそうだ。
口から血を流して死んでる犬を、
世間の目もはばからず抱きながら号泣したそうだ。
子供の頃聞いた話だが、聞いた時は俺も大泣きした覚えがある。
それ以降、我が家には犬がいなかった事は一度も無い。
何か守られてるというか、優しくなれると言うか、動物は不思議だよな。

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