変なカップル
2019/06/17
去年の今ぐらいの話。
普段通り大学での勉強を終えて、最寄駅から自宅へ歩いて帰ってた。
時間を詳しく覚えてないけど、確か10時ぐらいだったと思う。
多少人気のある商店街を抜けて、人がまばらになってきたころ、
10mぐらい先に奇妙なカップルが歩いているのに気が付いた。
男は今風の若い感じで、なかなかオシャレな服装。
なのに隣で腕を組んで歩いてる女は、おかっぱで、
時代遅れの変なワンピースにパンプスを履いてた。
なんか変なカップルだなぁーと思いながら自宅に向かって歩いてると、
一人で歩いてる自分の方が少し早いらしく、
自宅に着く直前には前のカップルに追いついてた。
自宅はその道を左に入ってすぐのところにあるんだけど、
ちょうどその角を曲がろうとしたら、
その女が急に振り返って、俺に
「なに見てんだよ!このゲス野郎!」
と、青木さやかばりの勢いでキレられた。
あまりに突然のこと過ぎて、唖然として佇んでいる俺をよそに、
その女は歩きながら、罵詈雑言を二度三度あびせて去っていった。
その時は腹が立つやら意味がわからないやらで、
ちょっとテンパリながら慌てて家に入ったんだけど、
よく考えたらなにかおかしいことに気がついた。
思い返してみると、隣で女がそれだけわめき散らしてるのに、
男は止めるどころか、一度もこっちを見ることなくスタスタ歩いていたこと。
もう一つは、そもそもその時まで一度も振り返っていないその女が、
なんで俺がそのカップルを見ていたのかをわかっていたのか。
もう今の家に住み始めてから6年目になるが、あのカップルを見たのはその一度だけ。
もう一度会いたいような会いたくないような、変な体験だった。