もう一人の俺
2019/06/15
まだ厨房の頃の話。
ある朝登校すると、女子の一人が
「○○(俺の名前)ってA学院通ってんだぁ」
と言ってきた。
A学院とは近所の進学塾。
自慢じゃないが俺は当時成績も良く、
実家がド貧乏だった事もあり、塾通いなんかしていない。
「通ってねぇよ」
と言うと、昨日の夕方、A学院から出てきた俺を見たという。
人違いだと言っても、顔も見たし手も振ってきたという。
俺の地元は田舎なんで学区内の皆顔見知りだし、
確に間違われようが無い。
でもその日のその時間は、間違いなく家に居たんだが・・・
その数週間後、近所に新しい古本屋が出来たとあって、
友人達と行ってみた。
すると店に入るなり、店の親父がブチギレて走ってきた。
他の友人に目もくれず、真っ直ぐ俺に向かってダッシュしてくる親父。
そして突然俺に向かって、
「良くまた来れたな!!よしっ学校に連絡してやるっ!!」
はあっ?とか思ってると、
あれよあれよという間に裏の事務所に連れてかれた。
「何すんだよ!クソじじいっ!!」
すると店の親父の話では、前の週の店のオープン初日に俺が来店。
漫画からエロ本から万引きして逃走したという。
「んな事してねえよっ!俺今日初めて来たんだぞ!」
と言っても信じてくれないし、友人達もだんだん疑いの眼差しに。
とりあえずと学校に連絡され、担任が登場する事になった。
担任登場平謝り。
しかし詳細を聞いている内に、担任も変な事に気付いた。
「11月7日ですか?あれ?○○(俺の名)。
その日ってお前、工藤んちに居なかったか?」
そういえばその問題の日、
俺と友人数人は文化祭の準備で工藤という友人宅に集まっており、
親に行き先を告げて無かった友人の母親が、「娘の帰りが遅い」と大騒ぎ。
連絡網を使って、担任が工藤の家に迎えに来た日だった。
「その万引き犯はこの子じゃないですね、時間的にも。私が証人です」
と担任が言ってくれたが、店の親父は納得行かず担任と大喧嘩。
「じゃあコレ見てみなさいよ!」
と防犯ビデオ再生。
映ってるのは顔こそ白黒で分かりづらいが、まさしく俺のようだった。
その後、
「まぁ今回だけは」
と、お互い納得いかない感じでうやむやに。
しかし、もう一人の俺は、この先も更に登場しつづける。
中3の時1コ上の女の先輩から電話が、
「ねぇ、Kちゃんて娘知ってる?」
「いや、知らないすよ」
「そう。何か隣のクラスの娘で昨日初めて喋ったんだけど、あたしの出身中学言ったらさ。
○○君と一緒だ!ってアンタの名前言ってたんだよ」
「へぇ、その人ドコ中すか?」
「ドコ中も何も県外から来た娘だよ。
何か、最近アンタから連絡無いって落ち込んでたよ?」
「知らねぇすよ(笑)可愛いんすか?その人」
「本当に知らないの?!嘘だったらアンタ最低だよ!」
「何で怒ってんすか!!本当に知らないっすよ!!」
「本人、先月アンタにナンパされて、ヤッちゃったって言ってるんだけど」
「はぁっ!!?」
もちろん身に覚えなんて無い。
だから一回会わせてくれと言う事になった。
翌日、そのKという女に会う。
もちろん顔も見たこと無い、しかしタイプ。
そしたらKは、俺の事詳しい詳しい。何でも知ってる。
俺から直接聞いたといって泣きじゃくる。
俺じゃないと言っても聞かない。
何とかKをなだめて、
「とりあえずこれから交流深めていいお友達に」
という事に。
そんでそれからKとどんどん仲良くなって、
俺が高校入った頃には『もう一人の俺』話も信じてくれるようになり、
彼女みたいになってきた。
すると俺が高1の夏、コンビニのバイトしてる時に変な事が。
『スタッフおすすめ!』ってカードに、
自分のプリクラ貼って商品とかに付けてたんだけど、
その中の俺のプリクラだけ傷だらけに。
「誰だこんな事すんのは?」
って外したら、カードの裏に爪でひっかいたような文字が。
『あのおんなはおれがさいしょだったろうが』
それから間も無く、Kから別れを告げられました。
理由を聞いたら、
「あなた達には関わりたくない」
と言われました。