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自然の力

2019/06/06

数年前の夏の体験です。
スキンダイビングで10m程潜り、
深い深い青色の中で、遠い遠い青空を眺めながら、
自然の中にいる自分を心地良く感じていました。
海の中は凄く静かで、水も優しくて、
何よりとても広くて大きい世界。
心の中も綺麗な青色になった感じがしていました。
そして岸へ戻ろうとしていた時、
急に大きな衝撃で視界が真っ白になりました。
何が起きたのか全然分かりませんでした。
暫く意識を失い、やっと視界が戻ったところ、
漁船に衝突されたと分かりました。
泳ごうとしても、脳震盪で頭の命令が身体に伝わらないので、
何度も水中に沈んでは意識を強く持ち、またもがく、を繰り返しました。
頭を切っていたこともあり、周囲の海は真っ赤でした。
正直『ダメかな…』と思いました。
大好きな海で、この大切な命が途絶えるなんて…
大袈裟ではなく、人生の何年分かと思えるエネルギーを使って、
何とか仰向けになって、呼吸が出来る状態になれました。
ウエットスーツを着ていたのでプカプカ漂い、
一応フィンで岸の方向へキックしましたが、
途中で何度も意識を失いました。
後は余り考えないようにしました。
生きるとか死ぬとか、助かるとかダメかもとか。
心も身体も酷い状態でしたが、
何故か波の揺り籠に乗っている様で気持ち良かったのでした。
そうして次の瞬間、
『誰かに助けられた!』
と思って意識を取り戻しました。
でも、助けてくれたのが人ではないと、直ぐに気付きました。
岸から繋がる岩場に流されて、
その岩場に当たって気がついた様ですが、
何故か硬い岩でなく、柔らかい大きな手の様な、
温かなものに包まれた感じがしたのです。
そして、その時に丁度大きな波が来て、
その波に運ばれて、気付くと私は岩場の上にいたのでした。
信じられないことに、
海草たちが私の全身のクッションになってくれていたのでした。
涙が止まりませんでした。
朦朧とした意識の中、涙が本当に止まりませんでした。
神様とか自然とか、よく分かりませんでしたが、
とにかくそうした優しくて温かなものに、
その大き過ぎる愛の力に心から有難うと伝えました。
岸へ戻ろうと立ち上がったら、海草が一斉に海へ戻って行きました。
事故の経験は確かに色々とショックでしたが、
それ以上に、海草がくれた柔らかい絨毯(?)は、
長い間海と接して来て初めて見た光景だったので、大変驚きました。
自然を愛してきた私。
その私を自然も愛してくれたみたいで嬉しく感じました。
生と死の狭間を行き来して、
こんなとんでもないピンチの時に経験した愛だからこそ、
この思いは揺ぎ無いものになった様な気がします。
『愛し愛されてこそ命は輝く!』と今の私は思っています。

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