奇人変人としての評価が高い彼
2019/05/26
私のバイト先には
『k君』という変わり者で有名な人がいた。
かなり奇行が目立つ人なんだけど、
性格的に明るく人懐っこいせいか
職場のムードメーカー的な位置付けにいる人。
どんな事をするか例をあげてみると…
誰も呼んでいないのに
「ん?何?」
と突然振り返る。
鳴っていない携帯電話に出て、
まるで通話中かのように話しだす。
本人いわく、不幸があった人がわかる。
まぁ電波な人なんだと言ってしまえば
それまでなんですが、
冗談交じりにそういったことをするので、
なかなか楽しい人。
去年の丁度今頃、忘年会を兼ねて
k君の家で鍋を囲もうという話がでました。
何せ奇人変人としての評価が高い彼のこと、
口にはだしませんが、
彼がどのような生活をしているのか皆興味津々。
k君は嫌がりましたが、
結局押し切られてマンションへと向いました。
部屋は3Fにあり、
予想と反して普通の部屋。
皆でツマラネーとか文句を言いながら鍋を作り、
酒も飲み、時間も深夜の2時を回った頃に
事件はおきました。
いい感じに皆お酒が回り、
下戸で運転手の私はテンションについてゆけず、
食器や鍋をかたしつつ、
台所で洗い物をしていました…そこへ、
「ばぁーーーーん!!!」
と物凄い音がするではありませんか。
近所迷惑を考えろよと思いつつリビングに戻ると、
みんな青い顔でお互いを見つめています。
ただk君1人だけが
窓越しに外を見ているようです。
あんまり騒ぐと迷惑ですから^^;
と私が注意すると、
みんなが
「…いや…うーん…」
と要領をえない生返事をかえしました。
誰か悪酔いして喧嘩したのかな?
と思った瞬間…
「ばぁーーーーーーーーん!!!!」
わかりました。
誰がならしたんでもなく、
k君の家の窓が叩かれているのです。
でもここは3Fで、
外にベランダはありません。
窓のそばにも誰もいないので、
何がおきているのか理解できず、
全員ただ硬直して顔をみあわせていました。
窓を叩く音は続き、
はやくおわれ!
という自己逃避のなかで、
k君を見ると、彼は自分の携帯電話で
何かをはなしているじゃないですか!
あまりに非現実的な光景に
何やら怒りすら込み上げてきたその時、
k君が言いました。
「白髪で右目の上にイボみたいなのがあって、
餃子耳なおじいさんに心あたりある人いる?」
驚きました。
それは私の叔父の特徴そのものなのです。
私がk君にその事を告げると、彼は
「ちょっと」
と私だけを台所に呼ぶとこう言いました。
「もう間に合わないけど、
今日は急いで帰った方がいい。
こっちは大丈夫だし、
帰りも変な事はおきないから大丈夫。
保障する」
あぁ叔父が亡くなったんだな…と理解しました。
その後は自宅に帰り、
予想どうりの訃報に改めて呆然とし、
ガクブルしながら朝を待ちました。
その後k君は
本格的に職場での居場所がなくなってしまい、
残念ながら自主的に退職していきました。
今にして思うと彼の奇行は、
私達には理解できなくても、
彼には何か見たり、
聞こえていたのかもしれませんねぇ。