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エレベーターの外

2019/05/23

怖い話じゃなく不思議な話です。
特にこれといったオチもありません。あしからず。
当時学生だった私は、運送のバイトをしてました。
社員の方と二人で配達に回るんですが、その時に起きた出来事です。
大きな荷物を運び終え、ついでと渡された小包の配達に向かいました。
場所は都内にあるマンションです。
かなりデカイとこです。
現地に着いて、私は小包を抱えて、
小走りでマンションのエレベーターに乗りました。
配達先は12階です。
ボタンを押し、エレベーターが上昇するのを感じました。
途中、4階と5階の間くらいで、突然エレベーターが止まってしまいました。
しかも、グラグラ揺れているようなのです。
すぐに地震だと思いました。
揺れ自体はすぐ収まったのですが、
エレベーター内で地震というのは初めての経験です。
正直かなり怖くて、小包を持つ手が、
かなり汗ばんでいたのを覚えてます。
2~3分程でエレベーターが動き始めました。
何事もなかったかのように上へ行きます。
後から知ったのですが、エレベーターは地震を関知すると、
最寄りの階で自動的に止まるそうです。
この時はなにせ初めてのことだったので、
特に不審だとは考えませんでした。
ポーンと音が鳴り、12階に到着しました。
扉が開いた時は、やはりホッとしましたね。
ただ本当に問題なのは、このあとに起こったことでした。
扉が開いて外に出た瞬間に、凄まじい違和感が私を襲いました。
違和感の正体は、世界そのものだったんです。
まず、マンションに到着したのは、午後3時過ぎくらいでした。
エレベーターから下りて外を見ると、夏の夕方のように真っ赤なんです。
空が、真っ赤な夕焼け空のようになっていました。
そして、街の様子が明らかにおかしいのです。
何も動かず、何も音がしないのです。
影が濃く街を覆っていました。
本当に不気味な世界で、私は悲鳴をあげてしまいました。
何が起こったのか分からず、頭が混乱したままでした。
私はすぐさまエレベーターに取って返し、1階へのボタンを連打しました。
特に問題もなく、滑るように降下を始めるエレベーターで、私はうずくまってました。
ポーン、と音が鳴りエレベーターが到着しました。
階を見ると5階です。
扉が開くと、サラリーマン風の方が乗り込んできました。
私がうずくまってるのを見てびっくりしたのか、
「大丈夫ですか」
と声をかけて頂きました。
私は必死に今見たものを伝えようとしましたが、上手く言葉に出来ません。
すぐに1階に着き、付き添われるように表に出ました。
外は、先ほどの真っ赤な光景など嘘のように、
午後の明かりが照っていました。
以上で私の話は終わりです。
私が見たもの、あの世界は何だったのでしょうか?
あれが白昼夢であれば、それはすごく安心出来るのです。
でも、どうしてもあれが白昼夢とは思えない。
あれは異世界かもしれない。
パラレルワールドとか、私はあまり詳しくないのですが、きっとそういった類のものです。
あのままあそこに留まっていたら、一体どうなったのでしょうか…

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