本文の文字サイズ

純粋な女の子

2019/05/20

高校時代にすごく仲の良い友人Rがいた。
文系のクラスで女子が多かったけど、
私達のグループはいわゆるヲタでクラスから若干浮いていたものの、
その分結びつきは強く、みんな仲が良かった。
その中でもRは、数年前から
梳いてもいなさそうな長い黒髪(腰まである)をしており、
水泳の授業の時でも脇の毛を剃っておらず、
ちょっと変わった子ではあった。
(直毛ではなく天然パーマなので、ものすごいボリュームだった)
でも、優しくて思いやりがあり、ユーモアもあって、
私のことを特に大切にしてくれていたので、
一緒にいて楽しかったし、すごく大事な友達だと思ってた。
当時、私は結婚願望がすごく強かったので、
「卒業したら始めて付き合った人と結婚したいなー」
みたいなことを言ったら、彼女
「そうだよね!結婚するまでは、男の人に身体を許しちゃだめだよね!」
とすごく食いついてきた。
その後、
「今は女の子の意識も変わってきてるけど、私たちは結婚するまで純潔を守ろうね」
と。
私もその時は、初恋の人と結婚ってロマンチック、
くらいにしか思ってなかったので、そうだねと同意。
その後もRは、ほとんど私に心酔する感じで、
何かあったら私を持ち上げて特別扱いしてくれてた。
その後Rは家庭の事情で引っ越していったんだけど、
お別れにって本をもらった。
2冊。
彼女にとってはすごく大切な本らしく、
R手作りの綺麗なブックカバー付き。厚い本。
中身はぱらぱらとしか見てないんだけど、
奥付や著者名から予測するに、
多分、怪しい新興宗教の教祖の本で、
教祖様がいかに素晴らしいか、
いかに世界の要人と付き合いがあるか、
などが書かれてあるみたいだった。
「素晴らしい本だから読んで。きっとAちゃん(私のこと)ならわかるから」
って渡された。
(当時の私は小説しか興味がなく、ノンフィクションらしいその本は読まなかった)
その後も手紙が来たんだけど、手紙って普通封筒じゃん。
でもRは、
「切手代がもったいないから」
と一貫してハガキで、
本当に虫眼鏡じゃないと読めないんじゃないかという細かい字で、
びっしりいろいろ書いてあった。
その後、彼女は韓国の語学院?に語学留学したということで、
国際電話の電話番号が書いてあったので電話した。
(今思えば、切手代も節約するような家庭で、留学というのもおかしな話なんだけど)
Rは
『まだ韓国に慣れなくて寂しい』
『電話くれて本当に嬉しい』
としきりに言い、
『また絶対電話してほしい』
と懇願された。
私も故郷を遠く離れて大学進学していて、
寂しいのはわかったから電話してたら、
電話代が月5万超えててびっくりした。
(国際電話したことなかったから、あんなに高いの知らなかった)
この辺で気づいておければよかったんだけど、
まだ高校卒業したての18歳。
日教組の呪縛にかかりまくり、
(なんせ修学旅行は韓国行ったしorz)
お隣の語学を習うために留学までするなんて偉いなーと思ってた。
宗教も何を信じようと自由だと思ってたし、詳しくは知らなかったから。
その後、私も大学生活で忙しくなり、精神的にもきつくなって、
実家に届く彼女のはがきに対する返事が鈍くなり、
とうとう私が体調を崩して返事を書かなくなった。
そしたら、同じようにすごくすごく小さな文字で、
『私Aちゃんに何か悪いことしたかな?
ううん、きっと私が知らないうちに、
Aちゃんの純粋で繊細で優しくて温かな気持を、無神経に傷つけたんだよね。
Aちゃんはすごくすごくいい子だもん。
私が卑しくて酷い人間だから、Aちゃんは愛想をつかしたのかな?
ごめんね、本当にごめんね』
みたいなことがびっしり書かれたハガキが送られてきてた。
もちろん、私は彼女の言うような人間ではない。
(どちらかといえばRの方がそういう感じの子)
大学の休暇で実家に帰ってきて、
なんとも言えない表情をした母に渡されたそのハガキを見たときに、
始めて彼女が異様な状態にあるってことに気づいた。
多分、某新興宗教の信者だったんだよなと思う。
家族揃って。
不自然なタイミングで唐突に引越し&転校したのも、
そのせいなんだろうなと。
そういえば日本の近代史の授業で、韓国併合のところにさしかかったら、
今まで見たことのないような固い表情で手を上げ授業の流れを止めて、
「朝鮮というのは侮蔑的な意味をもっているので、使うのはやめてください」
的なことを意見してた気がする。
のんびりしたところだったので、
そんなことで授業が中断したのは始めてだった。
それからもうハガキは来なくなったんだけど、
数年経って、某宗教のセンを思い当たった私は、
心配になって留学以前の住所に手紙を出した。
しかし、そのハガキは宛先人不明で戻って来てた。
彼女、今無事にいてくれてるんだろうか。
某宗教は大ッ嫌いだけど、
Rは本当にすごくいい子だったので心配だ。
例え私を勧誘しようとしてたとしても。
一番怖いのは、彼女がいなくなった後、
あんだけ仲の良かったグループのみんなが、
Rの話題を一切クチにしなくなったこと。
もしかしたら、みんな同じようなハガキをもらってたのかもしれないし、
彼女のヤバさに気づいていたのかもしれない。
近々集まる機会があれば、Rのこと聞いてみようと思う。

にほんブログ村 2ちゃんねるブログ 2ちゃんねる(オカルト・怖い話)へ

よろしければ応援お願いシマス

人気作品

人気カテゴリ

RSS